初午においなりさんを食べるのはなぜ?
その由来は?
そもそも初午ってどういう日なのでしょうか。
稲荷神をお祭りする全国の稲荷神社では、
二月のこの日に初午祭が行われます。
ということで、
稲荷神社と初午やキツネについての関係や、
初午いなりの日が制定された由来など、
おいなりさんについてのいろいろをまとめました。
初午の日に、
おいなりさんと一緒に食べる献立についてもお伝えします。
初午にいなり寿司を食べる由来は何?
二月最初の午の日 初午(はつうま)には、
稲荷神社に参拝する風習があり、
稲荷神社では『初午大祭』が行われます。
初午は、京都の伏見稲荷大社の御祭神が、
奈良時代、和銅四年(711年)二月の最初の午の日に、
稲荷山にお祀りされたことに由来しています。
その後、この日は全国各地の稲荷神社のお祭りの日となり、
二月二度目の午の日を『二の午』、三度目の午の日を『三の午』として、
お祭りが行われる場合もあります。
本来、初午の参拝の目的は、
旧暦では農作業を始める時期にあたることから五穀豊穣の祈願が主でした。
しかし、最近では開運や福徳、商売繁盛をもたらす御祭神として、
家内安全や商売繁盛を願うお参りが多くなっています。
伏見稲荷大社では、参拝者に『しるしの杉』を拝受して、
農作や幸福を祈願します。
また、稲荷神のお使いでもあるキツネにちなんで、
油菓子や油揚げをお供えしたり、食べたりする風習もあります。
初午の日は1年で最も運気が高まる日と言われており、京都・伏見稲荷大社 2/9初午大祭の「しるしの杉」です。 #kyoto pic.twitter.com/T2MAzcms
— トコトコト (@tokotokotocom) 2013年2月9日
その日に合わせて、
稲荷神社のお使いであるキツネの大好物「お揚げ」を、
いなり寿司として食べることで、
商売繁昌・産業興隆・家内安全・交通安全・芸能上達・病気平癒など、
様々な幸を願うのが「初午いなり」とされています。
「願いの数だけいなり寿司を食べると良い」
「いなりの3文字に倣い、
命の“い”
名を成すの“な”
利益を上げるの“り”として、
3つのいなり寿司を食べると良い」など、
各地で様々な縁起に基づいた習わしとして、
いなり寿司を食べる風習があります。
そもそもいなり寿司の歴史というのは古く、
江戸時代にまで遡ります。
江戸時代末期に、
江戸時代後期の三都(江戸・京都・大阪)の風俗や事物を説明した、
一種の類書として書かれた『守貞謾稿』に、
初めていなり寿司が登場しました。
当時から安価で美味しく、庶民に愛される味で、
手軽な食べ物として人気を博しました。
また嘉永五年(1852年)発行の「近江商買狂歌合」には、
いなり寿司を売る商人の姿が描かれており、
ざるや木桶、木箱、カゴを前後に取り付けた天秤棒を振り担いで売る、
「振売(ふりうり)」というスタイルで売られていました。
その後、幕末になると店舗でいなり寿司を売る店も現れ、
大いに繁盛したと言われています。
いなり寿司がなぜ『いなり寿司』と呼ばれるようになったのか、
それに関して明確な由来は未だ分かっていません。
いなり寿司研究の第一人者で、
清水すしミュージアム名誉館長の日比野光敏氏によると、
稲荷神社の主神は「宇迦之御魂神(うかのみたま)」という五穀豊穣の神様で、
別名を「御饌津神(みけつのかみ)」と言いました。
そこにキツネの古い呼び方である「ケツ」が重なり、
「三狐神」と解されるようになりました。
キツネは宇迦之御魂のお使いとされ、
稲荷とキツネの関係が生まれたと言われています。
また、キツネ自体も穀物を食べるネズミを捕食することや、
尾の形や色が実った稲穂に似ているところから、
古く平安時代から動物を神の使いとする信仰の対象であり、
そこに稲荷信仰が習合し、
江戸時代になって稲荷神が商売繁盛の神ともてはやされるようになり、
今日へと続く信仰が生まれたと考えられています。
稲荷信仰の総本宮である京都の「伏見稲荷大社」には、
稲荷の由来として次のような物語があります。
奈良時代の「山城国風土記逸文伊奈利社条」によると、
「秦氏の祖先である伊呂具秦公(いろぐのはたのきみ)が自らの豊かさを奢り、
餅を的にして弓を射ようとしたところ、
その餅が白い鳥に化して山頂へ飛び去り、
そこに稲が生ったので(伊弥奈利生ひき)となり、
それが社の名となった」とあります。
その山は、元々伊奈利山と呼ばれており、
この由来から「稲生」「稲荷」へと転じたと考えられています。
初午にいなり寿司を食べる初午いなりの日を制定
「初午いなりの日」とは、毎年2月最初の「午の日」のことで、
全日本いなり寿司協会では、
2月11日を「初午いなりの日」として記念日登録し、
関係各位のご協力のもとその普及に努めているということです。
一般社団法人全日本いなり寿司協会
〒107-0062 東京都港区南青山5-4-44 ラポール南青山 B101
Email info@inarizushi.org
2月11日は「初午いなりの日」で、
一般社団法人全日本いなり寿司協会が、
初午となる日に近い「建国記念の日」と同じ2月11日に定めました。
初午とは2月最初の午の日のことで、
稲荷神社では五穀豊穣を願う祭りが行われます。
初午は運気が高まる日とされ、
稲荷神社のお使いであるキツネの好物の油揚げを使った、
『いなり寿司』を食べると福を招くと言われています。
ところで『全日本いなり寿司協会』ってどんな協会?
って思うのですが・・・
一般社団法人全日本いなり寿司協会は、
食事メニューとしてのいなり寿司の地位向上と、
いなり寿司を通じた人生の愉しみ方の発信を通じて、
日本人の皆様に広くいなり寿司の魅力を再認識していただくとともに、
いなり寿司を通じた国際交流や様々な文化交流を目指して活動されてます。
古くから庶民の生活と信仰に深く結びつき、
いつの時代も手軽に美味しい食べ物として愛されてきたいなり寿司ですが、
「西の三角、東の四角」というように、
関西より西と関東より東で、
それぞれ三角と四角の形の違いがあるだけでなく中に入れるごはんも、
関西では五目寿司が入っているのに対して、
関東では白い酢飯だけが入っているなど、
地域による違いも個性的で、
バラエティーに富んでいるのもいなり寿司の魅力のひとつです。
初午いなりの日は2月11日の建国記念の日ですが、
初午にいなり寿司を食べるという風習は、
やっぱり初午の日でないとおかしい気もします。
また、初午の日も二月最初の午の日とされていますが、
立春を過ぎて初めての午の日とされている所もあります。
2019年の初午は、2月2日とされていますが、
2月2日は立春より前で、旧暦で言う新年を迎えていません。
一般的に使われている暦(カレンダー)は、太陽暦の新暦で、
明治5年の改暦まで使われていた旧暦は、
今でも神社仏閣などの祭事に使われていますが、
お祭りを新暦で行うところもあり、ややこしくなっています。
日本の暦には、二十四節気や七十二候、五節句や陰陽五行説など、
複雑な現わし方があります。
初午は、昔の暦で言う処の五節句と並ぶ雑節ですが、
この雑節は二十四節気とは関係していない雑節で、
このような雑節には、盂蘭盆会や中元、八朔や大祓などがあります。
初午に食べるいなり寿司 お稲荷さんと一緒に食べる献立は?
初午は『お稲荷さん』で知られる稲荷神社の祭日です。
この祭日は、
穀物の神様が稲荷山に降臨された日をお祭りするものです。
そして、初午にはこの『お稲荷さん』にちなんで、
いなり寿司を食べる風習があります。
初午といなり寿司の由来と東西の違い
キツネの好物はネズミなので、ネズミの油揚げという説もありますが、
それはちょっと嫌ですね!
もちろん神事なので殺生はタブーとされたために、
稲荷神へのお供えは、大豆でできた油揚げを供えるようになりました。
やがてその油揚げに、
稲荷神のおかげでもたらされた米(酢飯)を詰めるようになり、
「いなり寿司」や「お稲荷さん」と呼ばれて親しまれるようになりました。
ところで、関東と関西ではいなり寿司の形状が違います。
東日本では、米俵に見立てた俵型をしていますが、
西日本では、キツネの耳に見立てた三角形が主流です。
形は違えど、
いずれも稲荷信仰が反映されているのはたしかです。
また、東日本では「いなり寿司」と言い、
西日本では「お稲荷さん」と呼ぶ傾向が強いようです。
うちは伏見稲荷大社のお膝元、京都ですので、
もちろん三角形のキツネの耳の形をしたお稲荷さんを作ります。
甘辛く炊いたお揚げさんの中に、
人参やゴボウ、シイタケやタケノコなどを細かく刻んで甘く炊いたものを、
酢飯に合わせた『五目ずし』を詰めた『おいなりさん』です。
この時に一緒に作る献立としては、
『畑菜の辛し和え』です。
あまい『おいなりさん』ととても良く合うので、
いくらでも食べてしまいます。
あと、初午の時期は一年中で一番寒い季節なので、
からだが温まるように『かす汁』を作ります。
かす汁の材料は、
『おいなりさん』に入っている五目ずしと、そう変わらないのですが、
かす汁の中にも油揚げが入っています。
子供たちは『おいなりさん』に大喜びですが、
甘いのがちょっと苦手だという大人に、かす汁は大評判です。
初午の行事食として、
【しもつかれ】という御馳走があります。
栃木県を中心に北関東でみられる郷土料理で、
鬼おろしですった大根やにんじん、鮭の頭、油揚げ、大豆と、
酒粕などを煮こんだもので、冬の食卓には栄養満点な献立です。
【初午だんご】
養蚕の盛んな地域に多く、
初午には蚕の神様を祀る行事も行われたため、
繭がたくさんできるよう願い、繭の形に作った団子を供える風習があります。
【旗飴】
奈良県でみられる飴菓子で、
旗をまきつけた棒の先に飴をつけたものです。
旗飴は、商売をしている家が稲荷神社に供え、
そのおさがりをもらうために、
商売をしている家を、
「旗飴ちょうだい」と子ども達がまわる風習があるそうです。
行事食と言えば、
初午の近くに節分があります。
節分と言えば昨今では『恵方巻き』をおいては語れません。
聞くところによると『恵方巻き』や『恵方巻き』の丸かぶりに、
節分との関係はあまりないようで、
これはバレンタインのチョコレートと一緒で、
商機的作戦にしてやられた感が強いのですが、
それならこの『おいなりさん』もブームになるかもしれません。
初午の夜に、お稲荷さんの方角に向かって、
無言でおいなりさんを年の数だけ食べる…なんて、
いくらなんでもそれは無理ですね。
あとがき
関東のいなり寿司には、
何も入っていない酢飯が入っているのですね。
うちのおいなりさんは、けっこう具の多い五目ずしを入れるのですが、
ご飯の量と、甘く炊いたお揚げさんの数を合わせるのが難しいです。
おいなりさんも、節分の巻きずしのように、
エビフライやとんかつなど、
ボリューム満点の中身を、バラエティー豊かに工夫すると楽しいですね。