二十四節気 啓蟄の意味は何?七十二候の蟄虫啓戸 桃始笑 菜虫化蝶とは

春の行事

二十四節気の啓蟄には、
『蟄虫啓戸』『桃始笑』『菜虫化蝶』という、
三つの『七十二候』があります。

一年には春夏秋冬の四季がありますが、
四季の移り変わりを表すために、
一年を太陽の動きで二十四に分けたものが二十四節気です。

二十四節気は、各一期が約十五日ですが、
その二十四節気をさらに五日ずつ三つに分けて、
時候の様子を表したものを『七十二候』と言います。

二十四節気 啓蟄の意味と、
七十二候の蟄虫啓戸 桃始笑 菜虫化蝶についてまとめました。

  

二十四節気 啓蟄の意味は何?

『啓蟄』は、一年を二十四等分した二十四節気のひとつで、
寒さが和らいで虫たちが這い出して来る頃と言われます。

二十四節気は、太陽の動きによって決まりますので、
毎年同じ日ではなく、微妙に異なります。

おおむね、三月五日頃がこの日にあたるのですが、
2019年の『啓蟄』は三月六日になり、
『啓蟄』の期間としては、
この日から春分の日(三月二十一日)の前日までになります。

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土の中で冬ごもりをしていた虫たちが、
そろそろ活動を開始するころのことです。

『啓』は戸を開くこと、
『蟄』は冬眠している虫を意味していて、
気候が暖かくなって、
虫たちが地上に這い出して来ることを表しています。

『虫』という漢字は、
もともと蝮(まむし)の姿をかたどった象形文字で、
昔は昆虫に限らず、蛇や蛙、蜥蜴など、
小さな生き物はすべて虫と呼ばれていました。

この頃になると、
初雷が鳴りやすい時期にあたります。

初雷がとどろき、
昔の人々は、虫たちがこの雷に驚いて、
外に這い出してくるものだと考えていました。

『初雷』とは、立春が過ぎてはじめて鳴る雷のことです。

『初雷』は、冬眠中の虫を目覚めさせるので、
このころの雷は『虫出し雷』『蟄雷』とも言います。

また、啓蟄のころは、わらびやぜんまいなどの山菜が、
土からお顔をのぞかせる時季でもあります。

『春には苦みを盛れ』という言葉もあるように、
山菜の苦みが冬の間に身体に溜まった老廃物を排出させ、
シャキッとした元気なカラダに目覚めさせてくれるという言葉です。

啓蟄には『菰外し』をする風習がありました。

菰(こも)というのは、
松の木の幹に藁で作った莚(むしろ)を巻き付け、
松の害虫である松枯葉(マツカレハ)の幼虫を駆除するためのものです。

冬の入る前、十一月ごろになると、
松の木の地上2mくらいのところに莚を巻き付け、
腹巻をしたような松の木を見かけたことがあるのではないでしょうか。

冬のあいだ枯葉の中で冬を越すマツカレハの幼虫の習性を利用し、
春先になると、その菰を外して焼くことで、
害虫を駆除する効果があるとされていました。

実際には菰を巻くことで害虫を駆除する効果はないということで、
皇居の外苑や姫路城などでは、
松の木に菰をまくという害虫駆除は中止されました。

しかし、この『菰巻き』は、
冬の風物詩の一つとして、今でも続けている所も多く、
その菰中で冬を越した虫たちが、活動的になる前に、
菰ごと焼いて害虫駆除をする『菰外し』という風習は、
啓蟄の日に行われています。

啓蟄のころに獲れる魚に『鰆(さわら)』があります。

鰆は春になると産卵するために、瀬戸内海の沿岸へ押し寄せることから、
魚偏に春と書いてサワラと呼ばれていて、
とくに岡山の鰆は有名です。

鰆は産卵直前の春が有名ですが、
関東では脂ののった冬の『寒鰆』も人気があります。

また、『啓蟄』の季節を表すとき、
『土筆(つくし)』の絵がよく用いられます。

土筆の語源は、土の中から突き出してくるので、
『突々如(つくづくし)』『突津串(つくつくし)』からきています。

そして、つくしの様子が筆によく似ているところから、
土から出てくる筆と書いて『土筆』と書くのです。

土筆は啓蟄の頃に季節を感じながら食べTる山菜として、
つくだ煮や和え物にして旬の味覚を味わいます。

二十四節気 啓蟄の七十二候 蟄虫啓戸とは

七十二候の第七候 啓蟄の初候

蟄虫啓戸(ちっちゅうこをひらく・すごもりむしとをひらく)は、
新暦で言うと三月五日から九日ごろにかけてのことで、
冬ごもりしていた虫たちが動き始めるという意味を持っています。

地中の虫たちが大地の扉を開くということを意味しています。

春の陽光に誘われて、冬眠していた虫たちが地中から動き出す時季で、
『戸を啓く(こをひらく)』と書いて、
土の中から出てくる様子を表しています。

『啓蟄』と同じで、蟻などの昆虫も、蛇などの爬虫類も、蛙などの両生類も、
すべて『虫』とされています。

昔は、人の体の中にも虫がいると考えられていました。

『腹の虫がおさまらない』
『虫の居所が悪い』
『虫が騒ぐ』などの慣用句もその名残で、
体の中にいる虫が、
心の奥の意識や感情を操るものだと思われていたようです。

春の草花が咲き始め、
モンシロ蝶が舞い始めるのもこの頃で、
冬眠していたヘビやカエルなども、暖かさに誘われて出てきます。

二十四節気 啓蟄の七十二候 桃始笑とは

七十二候の第八候 啓蟄の中候

桃始笑(ももはじめてわらう・ももはじめてさく)は、
新暦で言うと三月十日から十四日頃にかけてのことで、
桃の花が咲き始めるという意味を持っています。

春を喜ぶように咲く桃の花ですが、
桃のつぼみがほころび、可憐な花が咲き始めるころのことで、
昔は花が咲くことを『笑う』とも表現していました。

三月三日の桃の節句には少し開花が早いものの、
旧暦ではちょうど桃の花が咲き乱れている時季です。

この頃の雪解け水は『桃花水』と呼ばれ、
枝に沿ってたくさん花をつける桃は、
古くから霊力を持つ木として信じられてきました。

桃は、弥生時代には既に日本には伝わっていたとされ、
魔除けや安産の象徴としても神聖視されてきました。

このころ、富山湾に群遊する旬のイカにホタルイカがあります。

蛍烏賊(ほたるい)は体内に約千個の発行器を持っていて、
三月から五月の産卵期には、富山湾に集まる大群が、
青白く幻想的な光を放ちます。

酢味噌和えや刺身で食べる『竜宮そうめん』は、
富山県の名物として有名です。

日本にスミレ科の植物は六十種以上ありますが、
すみれ色という色名にも用いられる紫色の可憐な野花『菫(すみれ)』は、
花の形が、大工道具の『墨入れ(墨壺)』に似ているところから、
名付けられたと言われています。

そのすみれの花期は三月から四月といわれ、
花言葉は『誠実』『小さな愛』です。

二十四節気 啓蟄の七十二候 菜虫化蝶とは

七十二候の第九候 啓蟄の末候

菜虫化蝶(なむしちょうとかす・なむしちょうとなる)は、
新暦で言う三月十五日から十九日頃にかけてのことで、
青虫が羽化して蝶となるという意味を持っています。

冬を耐えてじっと過ごした蛹(さなぎ)が羽化し、
ようやく蝶としてはばたくときの、
蝶に生まれ変わる時季をいいます。

菜虫(なむし)とは、畑の大根や油菜などの葉につく青虫のことで、
紋白蝶(モンシロチョウ)の幼虫を言います。

畑を荒らして害虫とされていた幼虫が、
何度も脱皮を繰り返して蛹になり、冬のあいだに飛躍する準備をして、
ようやく春に美しい蝶へと姿を変えます。

昔の人は蝶のことを、
『夢虫(ゆめむし)』『夢見鳥(ゆめみどり)と呼んでいました。

この呼び名は、
古代中国の思想家である荘子の説話『胡蝶の夢』からきています。

菜の花が咲くころに降り続く長雨を、菜種梅雨(なたねづゆ)と言い、
菜種は油菜のことです。

春の訪れとともに、
南部に押しやられていた前線が北上して長い雨を降らせます。

ちょうど菜の花が咲くころなので、
『菜種梅雨』と呼ばれるようになりました。

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あとがき

中国の二十四節気は、黄河の中・下流域の気候を基準にしているため、
日本の季節とは若干異なり、
ひと月ほど先取りすることになります。

二十四節気の『啓蟄』は、それぞれ初候・中候・末候の、
蟄虫啓戸 桃始笑 菜虫化蝶という三つの『七十二候』に分かれていて、
次の二十四節気『春分』へと季節が移っていきます。

『暑さ寒さも彼岸まで』と言われるように、
春分の日でお彼岸を迎えると、
『昨日まであんなに寒かったのに…』と思うほど、
嘘のように暖かくなっていきます。