京野菜とは、京都府で生産され、
京都の雰囲気を醸し出す京都特産の野菜のことです。
京の伝統野菜は、現存種36品種、絶滅種2品種、
京の伝統野菜に準じるもの3品種に分類されています。
京都は平安遷都より千有余年の間、
都としえ栄え、日本の中枢として多くの文化を育んできました。
都だった京都には、全国から選りすぐりの品々や人たち、
そしてたくさんの情報が集まりました。
野菜も宮廷や社寺に全国から優れた献上品として集まり、
京都の肥沃な土壌と豊かな水源、
農家の高い栽培技術により改良されてきました。
宮廷料理や精進料理の発展につれ、
見て美しく、食べておいしい京料理も発展してきました。
その京料理に欠かすことが出来ないものが京の伝統野菜なのですが、
社会の移り変わりとともに衰退や絶滅の危機にさらされるものもあります。
京の伝統野菜は,京都の食文化の象徴であり、
貴重な遺伝資源でもあります。
京野菜の種類と伝統野菜の特徴は何か、
ブランド野菜や旬野菜の種類と定義とは。
京野菜 唐辛子の新品種『京の黄真珠』を100年後の伝統野菜に!
フルーティーな香りの唐辛子『京の黄真珠』
直径5㎜~8㎜程の丸くて黄色い実『京の黄真珠』は、
京大の名誉教授 矢澤進さんが開発した、
新品種の唐辛子です。
南米原産の種子を元に、
長い年月をかけて京都市内の気候に合うように改良されました。
2019年から、香辛料として乾燥品が流通しています。
あとに残らない爽やかな辛さと、果実のような香りが特徴です。
もとの品種には不快なにおいを放つ成分が含まれていたのですが、
改良の過程で取り除かれました。
京都市では、京都大学や生産者と連携して新品種を開発し、
“新京野菜”として普及させる取り組みを進めています。
現在“新京野菜”は全12品種で、
『京の黄真珠』もその一つです。
100年後に伝統野菜として
京都人の食生活に定着することを目指しているそうです。
京の黄真珠は、病気や湿気に弱くて、
病原菌との接触を防ぐために、苗をポットごと植えたり、
畑の畝(うね)を覆う雑草よけのビニールをあえてつけずに育てたりと、
試行錯誤をされてきました。
最近は栽培方法も安定し、生産者も順調に増えているということです。
小さな実に、
その誕生を支えてきたたくさんの人たちの思いがこもっているようです。
京の黄真珠の収穫時期は9月~10月で、
収穫した実を乾燥させたら、
食品会社の『ギャバン』さんが、買い取って商品になります。
ミル付きの瓶に入れられ、
青果店や通販サイトなどで販売されています。
そうめんやうどんなど、麺類の薬味にしたり、
焼き鳥や野菜のおひたしにかけて食べると美味しいと評判です。
ねっとり感がおいしい『京の里だるま』は冬でも掘りたてがおいしい!
“新京野菜”には、ほかにも、
『京の黄真珠』とほぼ同時期に生まれた新顔があります。
だるまのようにまるまるとした姿から名付けられた新京野菜、
『京の里だるま』
もともと京都市内で栽培されていたサトイモは、
寒さに弱く、霜が降り積ると腐ってしまうため、
極寒期までは収穫できませんでした。
そこで、京都市の気候に合った、
寒さに強い品種をと開発されたのがこの新品種『京の里だるま』です。
サトイモは掘りたてが一番おいしいのですが、
『京の里だるま』は、10月上旬から3月下旬まで、
約半年間ものあいだ収穫ができるので、
その間ず~っと掘りたての美味しいサトイモを味わえるのです。
収穫後、
すぐに種イモとして植えられるのもありがたい特徴です。
一般的なサトイモは12月ごろに収穫したら、
春まで種イモを保存しておかなければいけないのですが、
乾燥しないように注意しながら長期保存するのは、
なかなか難しいそうです。
『京の里だるま』が流通し始めたのはここ数年のことで、
直売所や百貨店の催事を中心に販売されています。
ねっとりとした食感と濃厚な風味が好評で、
一度購入したらリピーターになるお客さんが多いということです。
強い粘りとぬめりが持ち味で、煮くずれしにくいため、
煮ものにはぴったりのサトイモです。
素揚げや天ぷらにしても塩だけで美味しく、
茹でたものを半つぶしにして団子にして、
和風だしのあんかけにすると、粋な一品になりますね。
城陽市産“ウメ”の新品種『城州白』の開発を目指し研究中!
梅林で有名な城陽市青谷の『城州白』は、
梅シロップやスイーツなどに使われるこの地域特産の“ウメ”です。
京都府立大学の研究室では、生産者や城陽市と連携して、
『城州白』の香りの成分評価や遺伝子解析の研究しています。
『城州白』という品種は、
モモのような甘く華やかな香りが特性です。
ですが、自家受粉しないので実がなりにくく、
栽培上の課題もあります。
ほかの品種と交配することで、
香りの良さを生かしながら、
より育てやすい新品種を生み出せないかと研究中なのです。
また、『城州白』を原料に使った
加工食品を開発する計画も進行中とのことです。
研究を通して、栽培技術の向上はもちろん、
特産品としての知名度アップも図りたいとのことです。
研究室では、リンゴとナシ、ウメとモモといった、
全く違った品種をかけ合わせた
ハイブリッド果術の実験にも取り組んでいるので、
どんな果物が生まれるかとっても楽しみですね。
『城州白』の実は、楕円形で先が少しとがっています。
その他の新京野菜の種類と旬の時期
★京ラフラン
京ラフランは、生でかじると大根のようでゆでると甘みがあり、
属間雑種(だいこんとキャベツ・コールラビ)を
掛け合わせて誕生した野菜です。
花蕾、葉、茎を食用とし、
3月中旬から5月中旬の、一般に野菜が少ない時期に旬を迎えます。
病気に強く農薬も少なくて済むうえ、
栽培の手間もあまりかかりません。
栄養価が優れており、
ほうれんそうと比べカルシウムが1.7倍、ビタミンB6が1.8倍、
総ビタミンCが2.9倍含まれています。
「京ラフラン」という名前は、
だいこんの学名“ラファヌスサティブス”の“ラフ”と、
キャベツの和名“カンラン”の“ラン”から名付けられました。
茎の皮をむいてそのまま食べてもおいしいのですが、
茎や葉をゆでると甘みが増して苦みやクセがなく食べられます。
属間雑種のため、害虫に強く栽培しやすいという特徴があります。
また、ビタミン類が豊富で、
動脈硬化や脳卒中を予防する働きが期待できるビタミンCを多く含みます。
★みずき菜
みずき菜は、京ラフランと同様に、
だいこんとキャベツの仲間(コールラビ)をかけ合わせて生まれた野菜で、
特に葉の部分を食用とするように改良されています。
収穫の時期は、3月下旬~6月下旬と9月上旬~11月下旬です。
★京てまり
ミニトマトをやや大きくした程度の大きさで、
鮮やかな赤色をしています。
4月下旬から7月下旬と9月中旬から11月中旬にかけてが旬の時期にあたり、糖度は7~8度とかなり高く、
フルーティーな味わいで大人から子供までおいしく食べていただけます。
また、一般のトマトに比べ、βカロチンやビタミンCが特に高く、
非常に栄養価が優れています。
しかも結実しやすくホルモン処理の必要がないため、
環境に優しい栽培法で作ることができます。
★京あかね
「京てまり」よりもひと回り大きなトマトで、
形は砲弾型(縦長)をしています。
また「京てまり」に比べ味が濃く、しっかりとした肉質が味わえます。
収穫の時期は、4月下旬~7月下旬と9月中旬~11月中旬です。
★京の風鈴かぼちゃ
直径10㎝程度の小さなかぼちゃで、
皮が薄く、皮ごと生で食べられます。
中身は薄緑色ですが、皮は綺麗な濃緑色で、
加熱調理しても色合いが変わらないため、炒め物には向いていますが、
水分が多いため、煮物には向きません。
収穫の時期は、6月上旬~7月下旬です。
★京唐菜
葉と茎を食べるために改良された“とうがらし”です。
普通のとうがらしの葉に比べ柔らかく、
熱を加えると辛みとえぐみが消えます。
また、夏が旬の時期にあたるため、
栄養価も夏場のほうれんそうに比べてビタミンCやカルシウムが豊富で、
夏場に不足しがちな葉物野菜として期待されています。
収穫の時期は、6月上旬~10月下旬です。
★京の花街みょうが
花穂を食用とする花みょうがで、晩夏から初秋にかけて収穫されます。
通常のみょうがに比べて大きく、紅色の発色が良く香りも良いので、
みょうが寿司にも重宝されています。
収穫の時期は、9月中旬~10月中旬です。
★京夏豆(さや文月・さや葉月)
夏場のインゲン豆の代用として開発されたササゲです。
太く肉厚で筋がなく食感が良いのが特徴です。
収穫の時期は、7月上旬~8月下旬です。
★京北子宝いも
京北地域限定で栽培されている里芋で、
10月から11月にかけて収穫されます。
従来品種と比較して、
とろみ成分が多くて美味しい、
子イモが密集して着く、
親イモも軟らかく食べられる、
調理する際に手がかゆくなりにくいなどの特徴があります。
収穫の時期は、10月上旬~11月下旬です。
あとがき
京都に都があったので、
食の文化の発展にも歴史があるのですね。
懐石料理や会席料理、普茶料理、精進料理
京料理の形も色々あって難しいのですが、
素材の持つ味わいや特徴、彩を大切にしたお料理は、
京都人の深い感性が込められているのだと思います。