「土用(どよう)」という言葉を聞くと、
土用の丑の日、そしてウナギを連想する方も多いと思います。
しかし、土用は一年に四回あって、
それぞれに重要な意味があるという事は、
あまり知られていないのかもしれません。
冬の土用はいつからいつまでなのか、
そして冬の土用はどんな意味がある日なのか、
過ごし方でしてはいけない事はどういうことなのかなど、
冬の土用についてお話したいと思います。
冬の土用はいつからいつまで?
■「土用」とは何?
土用とは、
『立春、立夏、立秋、立冬の前の約 18日間』のことです。
これらの土用の期間は、
季節の変わり目の時期ともいうことができ、
四季に合わせて4回あります。
暦ではときどき「土用」の文字を目にすることになります。
また、土用は暦の雑節(ざっせつ)の一つで、
他の雑節には、
節分、彼岸、八十八夜などがあります。
4つの土用のそれぞれは、
春土用、夏土用、秋土用、冬土用とも呼ばれ、
下記の期間がそれに相当します。
・冬土用:1月後半~2月初め
・春土用:4月後半~5月初め
・夏土用:7月後半~8月初め
・秋土用:10月後半~11月初め
一般的には、土用は、
立秋前の約 18日間の夏土用を指すことが多くみられます。
夏土用の期間は暑中(しょちゅう)ともいわれます。
そして、暑中見舞いを出す時期でもあります。
■2021年 冬土用はいつ?
2021年の冬土用は
土用入り 1月17日
土用明け 2月2日
丑の日 1月17日 1月29日
日数 17日間
ちなみに、春土用の土用入りは、
4月17日 土用明け、5月4日
夏土用
土用入り、7月19日、
土用明け、8月6日
秋土用
土用入り、10月20日、
土用明け、11月6日 です。
冬の土用はどんな意味がある日?
中国の陰陽五行説では、
季節に万物の根源である
「木」「火」「土」「金」「水」を当てはめています。
春は「木」、夏は「火」、
秋は「金」、冬は「水」となります。
ここで余るのは「土」です。
「土」は、
各季節の変わり目である立春、立夏、立秋、立冬の
「四立」前の約18日間に当てはめられ、
その期間を「土用」といいます。
よって、土用は年に4回あるというわけなのです。
土用は「土旺用事」の略で、
この時期に土の気が旺盛になるといわれてきました。
そのため、
土にまつわる禁忌や風習があります。
たとえば、
土いじりをしてはいけない、
穴掘りをしてはいけない、
大根の種まきをしない、
葬送は延期する、などです。
このような禁忌や風習は、
土用の時期が季節の変わり目であることから、
農作業のような重労働や新しいことをはじめると、
体調を崩しやすくなるため避けた方がいい、
という先人の知恵からくる戒めと受け取っていいでしょう。
■土用は雑節の一つ
雑節とは、
二十四節気・五節句以外の
季節の移り変わりの節目となる特別な暦日のことをいいます。
土用はその雑節のひとつで、
そのほかに、節分や彼岸、八十八夜、入梅なども雑節です。
土用は、
立夏・立秋・立冬・立春の
「四立」直前の約18日間のことですから、
土用入り、土用明けという、はじめと終わりがあります。
土用入りは太陽黄経(たいようこうけい)と呼ばれる、
太陽が天球経路を通る角度によって定義されています。
冬の土用は太陽黄経が297度、
春の土用は太陽黄経が27度、
夏の土用は太陽黄経が117度、
秋の土用は太陽黄経が207度となる日が
それぞれの土用入りです。
土用の明けは、立春・立夏・立秋・立冬の前の日となります。
冬の土用の過ごし方でしてはいけない事は?
■土用の過ごし方
・土いじりをしない。
・庭の草むしりも避ける。
・家の基礎工事も避ける。地鎮祭も。
工事のスタートを
土用より前にして作業するのはOKとする見方もあります。
・土用の時期に避けたい方角があるので旅行や出張は注意。
・新しく何かをスタートするのは避ける。
・大事な契約などもできれば避ける。
・体調を崩しやすいので無理をしない。
・睡眠を多めにとる。
・カフェインを控える。
・白湯などを飲んで身体のめぐりを良くすることを心がける。
これらの事に注意しながら過ごしましょう。
■土用でしてはいけない事は?
土用には、
新しく迎える季節の気を育むという意味があります。
同時に、「土に還る」と言うように、
「土の気」には、物事の終わりと始まり、
破壊と再生という性質があると言われます。
土用の間、
地上には「土の気」が満ちており、
色々なことが不安定になります。
そのため、
土用の期間は、
慎重に過ごすべき「凶」の時期とされたのです。
土用期間は、次のようなことを避けるべきと言われます。
・建築に関わること(地鎮祭や基礎工事の着工など)
・住環境に関わること(引っ越しや庭木の移動など)
ここで共通するキーワードは、
「土いじり」
どうして「土いじり」がよくないのか、
その理由を見ていきましょう。
「土用」とは、土の気が作用する時期でしたね。
土用の期間、土の気は盛んになり乱れています。
そんな時期に、無用に土をさわると、
土の乱れた気が伝わって健康を害する恐れもあるとして、
土いじりが戒められてきました。
先ほども出てきた地鎮祭や基礎工事の着工などは、
土いじりの最たるものです。
避けるべき、土いじりには、
他にもこんなことがあげられます。
・土を動かす
・穴を掘る・埋める
・庭に花や植物を植える
・花壇を作る
・庭木の移動
また、
土用に、土いじりが嫌われた理由のひとつに
土公神(どくじん)という神様の存在がありました。
土公神とは、陰陽道では土をつかさどる神様で、
「土の気」の化身として
土用の期間を支配すると言われています。
土用の期間に先ほど並べたような、
土いじりをすると、
土公神の怒りにふれて災いが起こると考えられていたのです。
ですが、
年に4回もある土用の日に土が触れないとなると、
とても困ります。
実は、土用の間日という日があり、
その日は土を触っても良いのです。
■土用の間日とは?
春土用:巳・丑・酉の日
夏土用:卯・辰・申の日
秋土用:未・酉・亥の日
冬土用:寅・卯・巳の日
となっています。
これらの日は、
文殊菩薩の計らいにより、
全ての土公神が清涼山に集められるため、
土を動かしても何も起こらない(祟りが無い)とされました。
■2021年 土用の間日の期間
冬土用の間日
1/18(寅)1/19(卯)1/21(巳)1/30(寅)1/31(卯)2/2(巳)
春土用の間日
4/19(酉)4/27(巳)4/28(丑)5/1(酉)
夏土用の間日
7/19(辰)7/23(申)7/30(卯)7/31(辰)8/4(申)
秋土用の間日
10/26(未)10/28(酉)10/30(亥)
となっています。
■土用にした方が良い事
土用は季節の変わり目ですから、
体調管理には気を配りたいところです。
その延長線上で考えて、
土用期間には、
家の中を整えると
次の季節を迎える運気を整えることになるので吉となります。
・大掃除や整理整頓
・定期点検
・部屋の模様替え
・土用に食べると良いものを食べる
■土用に食べるとよいとされている物
・冬土用
冬の土用は1月17日頃から2月3日頃で、
このころは風邪やインフルエンザに要注意の季節。
冬の土用は、
未の日に「ひ」のつくものや
赤いものを食べるとよいと言われています。
「ひ」のつく食べ物には、
ヒラメ、赤い食べ物にはトマトなどがおすすめです。
・春土用
春の土用は立夏の直前、4月17日頃から5月4日頃。
春の土用は
戌の日に「い」のつく白いものを食べるとよいとされます。
春土用でおすすめの「い」のつく食べ物は、
いわし、いちご、いか、インゲン豆、芋、大根、
しらすなどなどがあります。
・夏土用
夏土用の日は7月20日頃から8月6日頃。
夏の土用でおすすめの食べ物は、
皆さんも良くご存じの、うなぎですね。
丑の日に「う」のつくものや
黒いものを食べると夏バテが避けられるといわれています。
うなぎ、梅干し、うり、しじみ、土用餅(関西・北陸)など
・秋の土用の食べ物
秋土用は10月20日頃から11月6日頃で、
夏の疲れから秋バテが出やすい季節でもあります。
この期間には、
辰の日に「た」のつく食べ物や
青いものを食べるとよいと言われています。
玉ねぎ、大根、さんま、さばなどです。
その他に、
土用に食べるものは、
土用しじみ、土用餅、土用卵があります。
■土用しじみ
しじみには冬が旬の寒しじみと、
夏が旬の土用しじみがあります。
栄養価が高く、肝臓の働きを助けることから
「土用しじみは腹薬」と呼ばれています。
■土用餅
土用餅とは、
土用に食べるあんころ餅のことをいいます。
その昔、
宮中で、暑気あたりをしないよう、
ガガイモの葉を煮出した汁で餅米の粉を練り、
丸めた餅を味噌汁に入れたものを
土用の入りに食べるという風習がありました。
江戸時代に餅を小豆餡で包んだあんころ餅に変わりました。
お餅は力餅、小豆は厄除けに通じるため、
土用餅を食べると、
暑さに負けず無病息災で過ごせるといわれています。
■土用卵
土用に産み落とされた卵を土用卵といいます。
卵は栄養価が高いため、
うなぎと同じように精がつく食べ物とされ、
土用に卵を食べるようになりました。
あとがき
土用とは、
夏の土用の丑の日だけでなく、
季節の変わり目に当たる期間です。
一年に四回ある、それぞれの季節の土用の期間も、
体調管理にも十分気を付けて過ごしたいものですね。