夏越の祓いとは 茅の輪くぐりと人形代(ひとがたしろ)の由来と作法

夏の行事

六月三十日は夏越の祓(なごしのはらえ)

6月は旧暦で別名“水無月”といい
『水』が『無』い『月』と書きます

梅雨の真っさ中
水はいっぱいあるのに 水が無いと書くなんて・・・?
と思いますよね

その6月は 農耕民族の日本では
『田んぼに水を引く月』だったのです

それなのに 水が無い????

違うのです!
『水無月』の『無』という文字の意味は
「ナイ」ではなく 
連体助詞といって「名詞」と「名詞」を繋ぐ助詞で

『水無月』の『無』という文字は 『の』という意味で

6月は 水がない『水無月』ではなく
水の月という意味の『水無月』だという説があります

また 逆説によると
旧暦の6月は 今でいうところの7月上旬~8月上旬にあたり
真夏の猛暑真っさ中ということで
もはや梅雨も終わって「水が無い時期」という意味から
『水無月』だという説があります

どちらにせよ
一年の前半の最終日にあたる 六月晦日(30日)に行われる
「夏越の祓(なごしのはらえ)」は

その年前半の日々の暮らしの中で
知らず知らずのうちに犯したであろう罪や過ち
心身の穢れを祓い清め 残りの半年間の無病息災を祈る
初夏の行事です

  

夏越の祓いとはどういう意味があるのか?

拾遺和歌集に「題しらず」「よみ人知らず」として

「水無月の なごしの祓する人は ちとせの命 のぶというふなり」
と歌われているように

夏越の祓は
自分自身が 気がつかないうちに犯した罪や
心身のけがれを 祓って清めるための神事を言います

大祓の行事は 全国各地の神社で 毎年6月と12月の2回
その月の末日に行われます

6月30日に行われる大祓を
「夏越し(なごし)の大祓」(または「名越の祓」)といい

12月は31日に行われる大祓を「年越し(としこし)の大祓」と呼びます

夏に大祓が行われるのは
昔 衣服を毎日洗う習慣が無い頃や
水が少なかった時代に由来するとも言われます

雑菌が増えやすい夏を控えた時期に
新しい物に取り替えることで
病を予防して健康に過ごせるようにという意味が
込められていると考えられています

6月末日は梅雨にあたり
大祓が終わると夏の暑さやひでりを迎えることになるため
この時期を乗り越えるための戒めの意味もあったと思われます

「夏越の祓」が 
旧暦の6月末に行われることとなった由来は
神話の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の
禊祓(みそぎはらひ)にまで遡るそうですが

「夏越の祓」が新暦の6月30日に移った現在でも
日本各地の神社で行なわれていて

その年前半の厄落としである 6月30日の「夏越の祓」も
心身を清めてお盆を迎えるためのもので
大晦日の年越し行事のような派手さはありませんが
大切な節目の行事として行われている伝統行事です

夏越の祓 茅の輪くぐりと人形代(ひとがたしろ)の由来と作法は?

夏越の祓では 全国の多くの神社で
「茅の輪潜り(ちのわくぐり)」が行われ
正月元旦からの半年間の罪穢を祓います

参道の鳥居や笹の葉を建てて注連縄を張った結界内に
茅で編んだ直径2~3メートルほどの輪を建てて
そこを氏子が正面からくぐります

はじめに茅の輪の前に立って軽く一礼します

最初は向かって左側へくぐります

「はらいたまえきよめたまえ」と唱えながら
左足からまたいで輪をくぐります

元の位置に戻り
止まって茅の輪の前で一礼します

2回目は向かって右側へくぐっていきます
「はらいたまえきよめたまえ」と唱えながら
右足からまたいで輪をくぐり
右回りに回って元の位置に戻ります

止まって一礼し
3回目はもう一度左側へくぐります
左足からまたいで輪をくぐり
「はらいたまえきよめたまえ」と唱えながら
左回りに回って元の位置に戻ります

茅の輪で止まって一礼し
左足からまたいで輪をくぐり 御神前まで進みます

「二拝二拍手一拝」の作法でお参りをします

八ノ字を描いて計3回くぐることで
半年間に溜まった病と穢れを落とし
残りの半年を無事に過ごせることを願うというものです

現在では大きな茅の輪の中をくぐりますが
かつて茅の輪は
小さいものを腰につけたり 首にかけたとされています

これは『釈日本紀』の『備後国風土記』にもあるように
蘇民将来の伝説に由来するもので

武塔神の指示により茅の輪を腰につけたところ
災厄から免れ
武塔神は自らを速須佐雄と名乗り去っていったと書かれています

「茅の輪」はもともと茅(チガヤ)と呼ばれる
イネ科の植物を束ねて輪にしたものを指します

6月の夏越大祓に使われ
この輪の中をくぐることにより
疫病や罪穢を祓うことができると言われています

現在では多くの神社が芦を使っています

昔はこの時期に天然痘などの疫病が流行ったため
疫病を祓うために茅の輪が使われていたそうです

「茅の輪」をくぐることで禊(みそぎ)をし
災厄を遠ざけるという意味があります


人形(ひとかた)は“人形代(ひとかたしろ)”のことで
自分の干支を書くこともあるようですが
基本的には名前と年齢が一般的のようです

年齢は満年齢ではなく数え年で記入しますが
数え年がわからないときは生年月日でも構わないそうです

そしてその“人形代(ひとかたしろ)”で身体をなでて清め
息を3度吹きかけて
自分の心身の罪穢をうつすのです

こういった神霊が寄り付きやすいように形を整えたものを
「形代」(かたしろ)と呼びます

体のけがれをその紙でなでて移すことから
「撫物(なでもの)」ともいい
海や川に流すことで自分の代わりに清めてもらうものです

人形(ひとがた)には
書き方の形式というのは存在しませんが
人形でからだを清めることにより
形代には霊が宿るとされています

夏越の祓のお焚きあげによって
穢れが清められて浄化され 運気が上昇するのです

神社では
陰陽道で用いられた呪詛を起源とする
人形代(ひとかたしろ)に息を吹きかけ
また体の調子の悪いところを撫でて穢れを遷した後に川や海に流す
ということが行われています

この「流す」という行為は
後に願掛と結びつき
同時期に行われる七夕祭と結びついて
短冊を流すこともあるそうです

夏越の祓の食べ物 夏越飯!厄除けの和菓子は水無月

夏越の祓にたべる厄除けの食べ物を紹介します

京都では夏越祓に「水無月」という和菓子を食べる習慣があります

水無月は白い“外郎(ういろう)”生地に小豆を乗せ
三角形に作られた甘い蒸し羊羹のような和菓子のことです

水無月の上部にある小豆には 悪霊ばらいの意味があり
三角の形は暑気を払う氷を表していると云われています

2015年になってから「夏越飯」という
行事食を広める動きが出てきました

「夏越飯」は
夏野菜のまるいかき揚げを雑穀米にのせた丼飯のことです

夏越の行事食の謂れとして
「夏越飯」は「夏越の祓」の茅の輪が由来になっています

古事によると蘇民将来(そみんしょうらい)が
素盞嗚尊(すさのおのみこと)を
「粟飯」でもてなしたという伝承にならったもので
邪気を祓う「粟」や「豆」などが入った雑穀ごはんや
五穀ごはん・小豆ごはんなどに
茅の輪をイメージした 
邪気を祓うといわれる赤や緑の旬の夏野菜を使った丸いかき揚げをのせ
百邪(ひゃくじゃ)を防ぐといわれる旬のしょうがを効かせ
おろしだれをかけたごはんです

まとめ

6月も終わりの頃となると
あー 今年も もう半分も済んでしまったのか・・・・
なんて
時の経つのが あまりにも早いことに気付かされます

『もうすぐお正月ですね!』なんて言うのは
チョット気が早すぎますが

これから襲ってくる 猛暑! 激暑! 凄暑!を迎え撃つには
夏越の祓で
今年前半の悪行を禊して 運気を上昇させなければ<<<<