2021年3月9日、
理化学研究所と富士通が共同開発した
スーパーコンピューター『富岳』の共用が開始されました。
スーパーコンピュータ『富岳』は、
理化学研究所の『京』の後継となる日本のスーパーコンピュータで、
2014年(平成26年)に開発開始、
2020年(令和2年)より試行運用、
2021年(令和3年)に本格稼働しました。
理化学研究所と富士通が共同開発した『富岳』は、
スーパーコンピューターの性能を競う世界的なランキング
「TOP500」「HPL-AI」「HPCG」「Graph500」で、
世界初の四冠を、2020年6月と11月の2期連続で達成しました。
現在、スーパーコンピューター『富岳』は、
兵庫県神戸市・ポートアイランドの
理化学研究所計算科学研究センターに設置されています。
ニッポンの未来を支える計算基盤として、
期待されているスパコンなのです。
スーパーコンピューター『富岳』とは?
スーパーコンピュータとは、
科学技術計算を主要目的とする大規模コンピュータで、
大規模・高速の計算能力を達成することで、
ニッポンの未来を超速シミュレーションします。
そのための最適化されたハードウェアやソフトウェアを
備えているのです。
ソフトウェアとしては、
演算処理装置の搭載量の拡大に応じた
並列計算処理に適した方式が採用されています。
コロナ禍の中で、一部の機能を先行利用し、
ウィルスの飛沫シミュレーションが行われたことで、
『富岳』の名前を知った人も多いことでしょう。
スーパーコンピューター『富岳』は、
気象予測や創薬などの、科学技術計算に用いられる
高性能なコンピューターシステムのことです。
かつてはコンピューターの頭脳であるプロセッサー(CPU)を、
少数で高速化したコンピューターを指していたのですが、
現在では、プロセッサー(CPU)を多数用いて、
並列計算を行うことで高速化するのが主流になっています。
『富岳』には、48のコア(演算回路)を搭載した、
富士通製のCPU「A64FX」が、15万8976個使用されていて、
計算能力はスマートフォン約2000万台分ともいわれています。
スーパーコンピューター『富岳』の開発目標
スーパーコンピューター『富岳』の開発目標は、
「京」の100倍のアプリケーション実効性能を目指すことでした。
そして、使いやすさを徹底追及して作られた
スーパーコンピューター『富岳』には、
2014年の開発当初より『富岳』には3つの目標がありました。
★一つ目が、省電力
『富岳』の消費電力は、最大30~40㎿と、
前身の『京』の2~3倍強です。
計算能力が40~100倍に達することを考えれば、
驚くべき省エネ性能といえます。
★二つ目が、「高いアプリケーション性能」
これは、理論上の計算性能よりも、
アプリケーション使用時の実効性能を重視する考え方です。
『富岳』の開発ではプロジェクト開始当初から、
創薬や防災、気候変動など、9つの重点課題が設定されていて、
それぞれの分野における代表的なアプリケーションを、
いかに高速化できるかを重視しています。
また、
ハードウェアとソフトウェアの設計を初期段階から協調して行う
『コ・デザイン』の手法を用い、
複数のターゲットアプリケーションで『京』と比較して、
最大100倍以上の性能にすることを目指したということです。
★三つ目の目標が「使い勝手の良さ」
現在のスパコン世界ランキング上位には、
GPU(画像処理向けの計算に特化したプロセッサー)などの、
演算加速器を用いたシステムが名を連ねていますが、
これらは用途が限定されるのです。
一方、『富岳』では、
スマートフォンなどでも使用される
汎用CPUをベースに構築されているため、
業界標準のプログラムなど、
幅広いソフトウェアを活用しやすいということです。
スパコンランキング2021も世界一
2020年に、スパコンランキング4部門で、
2位以下に大差をつけて世界一位に輝いた『富岳』は、
産業用アプリケーションの実効性能の評価に適した「HPCG」や、
ビッグデータ解析の性能指標となる「Graph500」では、
3~5年は抜かれることはないといわれています。
性質の異なる4ランキングを制覇したということは、
『富岳』の計算能力と実用性・汎用性の高さの証です。
『富岳』の誕生で、
これから先、日本はどう変化していくのでしょうか。
活用範囲は学術研究からものづくりまで実に多彩で、
高精度で大規模なシミュレーションと、
AIやビッグデータ解析の連携によって、
社会的課題を解決していくことが期待されています。
例えば、スマートフォンを通じて、
人々の行動データが蓄積されていくことで、
被災時の避難計画や、
街づくりのシミュレーションなどが可能になります。
また、このようなシミュレーション結果に基づく
政策決定も行われていくことでしょう。
これまでスパコンが関わっているとは思われなかったような、
小さな現象にも、
『富岳』の計算能力が役立てられていくことと思います。
世界一のスーパーコンピューター『富岳』は、
日本の未来を支える頭脳なのです。
スーパーコンピューター『富岳』名前の由来
『富岳』という名前は、一般公募で選ばれた名前です。
日本人は桜と富士山が大好きですね!
日本のど真ん中に聳え立つ富士山の姿は堂々としています。
世界一のスーパーコンピューター『富岳』は、
日本が誇る富士山のような“性能の高さ”と
富士山の裾野のような
“ユーザーや対象分野の広さ”への思いが込められています。
あとがき
スーパーコンピューターというと、
とても難しいシステムで、
到底理解などできないだろうと思っていました。
もちろん理解することなどできませんが、
素晴らしい性能と、
私たちの生活にとても役に立つものだということはわかります。
数年前、『2位じゃダメなんですか?』というセリフで
世の中を驚かせたスーパーコンピューターですが、
スパコンランキング4部門で一位に輝いたことは、
やはり嬉しいものですし、
これからどんどん身近なところで役に立つことがわかれば、
さらに誇らしく思うことでしょうね。