微生物は、地球上に生きるすべての生物の中で、
もっとも原始的で、もっとも小さな生命体です。
微生物は肉眼で見ることはできませんが、
人間の体の周りには、
数えきれないほどの微生物が存在しています。
なぜその微生物が存在しているのか、
きっと意味があるはずです。
微生物はどんな役目を持っていて、
私たちの暮らしにどのような影響を与えているのか。
微生物の神秘的な世界を知りたいと思いませんか?
微生物の種類と数はどれくらい?
日本人の生活と古くから付き合いのある微生物は、
お味噌や漬物などの発酵に使われていて、
日ごろ食べている食材にたくさん用いられています。
そんな微生物について、
そもそもいったいどんな生き物なのかよく知られていません。
第一、微生物というものの厳密な定義がないのです。
調べて見ると、微生物とは? …
「微生物」とは、肉眼ではみることのできない、
顕微鏡などを用いなければその姿を確認することのできない
小さな生物のこと
とあります。
つまり、ごく小さな生物を総称して、
便宜的に『微生物』と呼んでいるようです。
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微生物に含まれる生物は、
細菌、菌類、微細藻類、原生動物などがあります。
実はシイタケやエノキなどのキノコも微生物に分類されています。
キノコは微生物が胞子をばらまくための装置として、
あのような形状をとっているのです。
では地球上には、
どれくらいの種類の微生物が存在しているのでしょうか?
食物連鎖の生態系ピラミッドで、
もっとも底辺に位置しているのが微生物です。
微生物は大きく真核生物と原核生物にわかれます。
真核生物は、核膜で覆われた核を持つ生物で、
代表的なものとして、カビや酵母が知られています。
一方、
原核生物とは、核がむき出し状態の生物で、
主なものは細菌です。
原核生物は、もっとも単純な生命体で、
これこそが生命の起源と考えられています。
この原核生物の総数は、
学名が登録されているだけで2万種と、
莫大な数ですが、これでも全体のわずか数%なのです。
微生物とウイルスの違いは?
今、問題になっているウィルスも、
微生物の一つと考える人もいますが、
研究者によってその見解は違うようです。
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ウィルスとは、人や動物の細胞に入り込み(=感染)、
自分の細胞を強制的に複製、増殖させる微生物です。
このため宿主になった人や動物には病気の症状が出てきてしまいます。
ウイルスは電子顕微鏡でないと見えないほど小さいサイズです。
多くの微生物学者は、
自己増殖できるものを生物としてとらえています。
しかしウィルスは、人体などに住み着いて増殖するもので、
自分のチカラだけでは数を増やすことはできません。
つまり、ウィルスとは、
生物になりかけの存在かも知れません。
微生物の役割と人間への影響
微生物の最大の役割は『分解』です。
動物の死骸を分解して土に返す役割です。
汚染した水や土壌をきれいにする技術にも、
微生物のチカラが使われています。
味噌などの発酵食品を作るときの発酵も、
微生物の分解能力を応用したもので、
たんぱく質などの成分を分解し、
ミネラルへと変換しているのです。
ということで、
人間の生活に欠かすことのできない微生物ですが、
なんとなく悪者としてのイメージが付きまとっています。
それは、
病気や食中毒を引き起こす病原菌やカビも、
微生物の一種だからなのでしょう。
微生物の中で、人間に悪い影響を及ぼすものは、
わずか1%程度なのです。
残りの99%は、人間にいい影響を与えるか、
全く無害のものなのです。
微生物がもたらすいい影響のうち、
良く知られているのが整腸作用です。
たとえば、ビフィズス菌には、
人間の大腸内で炎症の原因となる悪玉菌を退治する働きがあります。
ビフィズス菌にとっても、
人間の腸内はあたたかくてとても棲みやすいのです。
人間と微生物には、
持ちつ持たれつの共生関係が成り立っているというわけです。
人間の腸内には、
常に1000種類以上、約100兆個の細菌が存在していて、
その中にはいい働きをする細菌もいれば、
悪さをする細菌もいるということです。
その人の人種や年齢、体調などによって、
微生物の働きが変わる場合もあるのです。
ですから、
単純に良い・悪いではなく、
微生物全体と共生していくことが大切なんですね。
近年では、技術の進歩により、
微生物の鮮明な画像を見ることができるようになりました。
原核生物は単純な形をしていますが、
真核生物には複雑な構造をしていいるものもあって、
顕微鏡で覗くと実に多様で不思議な世界がそこに広がっていて、
興味を感じる人も多いことと思います。
あとがき
微生物は宇宙に通じる神秘といえますね。
微生物の世界から
生物の進化の過程を感じるのも楽しいです。
地球以外の天体で微生物が存在する可能性についても、
以前から研究者の間で議論されているところです。
難しいことはわかりませんが、
私は微生物によって発酵を促された
美味しい食材を味わうことにします。