東京国立博物館特別展『仁和寺と御室派のみほとけ』
天平と真言密教の名宝
京都の御室
仁和寺でも見ることのできない仁和寺の宝物や、
秘仏がみられる機会は滅多にありません。
江戸時代の出開帳以来、
初めて東京国立博物館で公開されるという、
『千手観音菩薩坐像』は、
天平彫刻の傑作として知られています。
仁和寺と御室派のみほとけ特別展
東京国立博物館の平成館で開催される、
特別展 仁和寺と御室派のみほとけ―天平と真言密教の名宝―は、
2018年1月16日(火)から3月11日(日)までです。
今回東京国立博物館では、仁和寺の国宝『阿弥陀如来坐像』をはじめ、
仁和寺を総本山とする全国の御室派寺院から、
国宝『千手観音菩薩坐像』や国宝『十一面観音菩薩坐像』といった、
貴重な秘仏66体が集結し一堂に会します。
仁和寺は、光孝天皇が仁和2年(886年)に建立を願い、
次代の宇多天皇が仁和4年(888年)に完成させました。
仁和寺は、京都市右京区御室にある真言宗御室派総本山の寺院で、
「古都京都の文化財」として、世界遺産に登録されています。
皇室とゆかりの深い寺(門跡寺院)で、出家後の宇多法皇が住したことから、
「御室御所」(おむろごしょ)と称されていましたが、
明治維新以降は、仁和寺の門跡に皇族が就かなくなったこともあり、
「旧御室御所」と称するようになりました。
御室は桜の名所としても知られ、
春の桜と秋の紅葉の時期は多くの参拝者でにぎわいます。
仁和寺の桜は『御室桜』の名が付くほど江戸時代から有名です。
徒然草に登場する「仁和寺にある法師」の話はとても有名で、
享保三年の貝原益軒の京城勝覧には、
「春は此御境内の奥に八重ざくら多し。洛中洛外にて第一とす」と絶賛されています。
仁和寺にはこの御室桜が約200本あり、八重咲きで樹高が低い御室桜は、
「花(鼻)が低い」ということから「お多福桜」ともいわれています。
この事から京都では、背が低くて鼻が低い女性のことを、
「御室の桜のような」と評することがあるのです。
満開は例年4月20日過ぎと遅く、
桜の名所の多い京都で季節の最後を飾る御室桜は、
日本さくら名所100選に選定されています。
仁和寺と御室派のみほとけ特別展 アクセス情報
特別展 仁和寺と御室派のみほとけ―天平と真言密教の名宝―
会期 : 2018年1月16日[火]-3月11日[日]
会期中に展示替があります
会場 : 東京国立博物館 平成館(上野公園)http://www.tnm.jp/
開館時間 : 午前9時30分-午後5時
毎週金・土曜日は、午後9時まで
入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日
2月12日[月・休]は開館、2月13日[火]は休館
観覧料金
一般1600円(1400円/1300円)
大学生1200円(1000円/900円)
高校生900円(700円/600円)
中学生以下無料
( )内は前売り/20名以上の団体料金
障がい者とその介護者一名は無料です。
入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。
主催 : 東京国立博物館、真言宗御室派総本山仁和寺、読売新聞社
【アクセス】
JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口下車 徒歩10分
東京メトロ 銀座線・日比谷線上野駅、千代田線根津駅下車 徒歩15分
京成電鉄 京成上野駅下車 徒歩15分
台東区循環バス「東西めぐりん」で上野駅・上野公園バス停から乗車し
1つ目のバス停が東京国立博物館前(2分)
展示をご覧になる方は正門からご入館ください。
東京国立博物館には駐車場はありません。
仁和寺と御室派のみほとけ 秘仏公開!
真言密教の寺院として名高い仁和寺には、歴代天皇の厚い帰依を受けて、
優れた絵画や彫刻、工芸品が集められました。
京都の仁和寺を中心とした御室派で知られる寺院からも、
多くの貴重な国宝や秘仏が公開されます。
その極めつけが大阪府藤井寺市にある 葛井寺の国宝『千手観音菩薩坐像』です。
天平彫刻の最高傑作のひとつで、優美な表情と均整の取れた体や衣の表現は、
究極の天平美と言われています。
しかも、この秘仏は江戸時代の出開帳以来、初めて東京で公開されます。
実際に千の手を持つ千手観音像は、この像しか確認されていません。
千の手が広がる『千手観音菩薩坐像』の表現は実に美しいものです。
そしてまたもう一つ必見なのが、
仁和寺創建時のご本尊である国宝『阿弥陀如来坐像』です。
宇多天皇が父の光孝天皇の菩提寺を弔うために建てた仁和寺に、
同時に納められていました。
特にこの仏像は、腹前で両手を重ね合わせるという定印という手の形式をしていて、
これは制作年がはっきりしている阿弥陀如来像の中では、
最も古い物とされています。
これは平安時代中頃の阿弥陀信仰がどのようなものだったか、
そしてまたこの時代の仏像造形がどのようなものだったかを考えるうえでも、
非常に重要なものとされています。
さらにこの特別展では、御室派寺院のひとつ、
福井県の中山寺から、本尊秘仏の重要文化財『馬頭観音菩薩坐像』も公開されています。
ご本尊は鎌倉時代の名品とされ、秘仏として伝えられてきました。
鮮やかな彩色だけでなく、光背や台座にも当時のものが残されていて、
実に重要なものです。
そしてまた、11世紀後半から12世紀前半にかけて活躍した、
当時を代表する仏師、円勢とその子 長円の作とされる、
国宝『薬師如来坐像』も必見です。
白檀を使って極めて精緻に彫刻されていて、
本地に直接金箔をほどこす截金技法と呼ばれるもので作られ、
細やかな文様が大変美しい作品になっています。
そして大阪にある道明寺の国宝『十一面観音菩薩立像』も見逃せません。
このご本尊は、頭上にいただく仏面から体側に下ろした右手の指先、
そして台座の蓮肉に至るまで、
すべて一つの木材から彫り出された一木彫像と呼ばれるものです。
胸飾や瓔珞といった装身具までが、極めて繊細で精緻に彫られ、
平安初期一木彫像の傑作と言われています。
他にも、福井県・明道寺からは、高さが250㎝をこえる、
国内でも随一の重要文化財『降三世明王立像』が公開されます。
顔は4面、手は8本、髪の毛は逆立ち炎の形をしていて、
怪異な姿が迫力十分です。
他にもこの特別展では、国宝『孔雀明王像』や『宇多法皇像』といった、
国宝の絵画や書跡、工芸品といったものを一堂に会しています。
仁和寺の歴史から、病気平癒や皇子誕生を願うために密教が用いた仏画や仏具、
そして仁和寺観音堂を再現したものまで、
御室派の数ある名品の饗宴を存分に堪能できるものとなっています。
あとがき
仏像のことは良くわからなくても、
見ているだけで何かを心に感じさせてくれます。
一般公開されていない観音堂が展示室に再現されているのは、
見逃せませんね!