京都 宇治にある県(あがた)神社では、
県(あがた)祭りと大幣神事が有名です。
神社の名前にも付けられている“あがた”は、
『県』と書きますが、
現在の都道府県の呼び名である“県”の元祖ともいえます。
この県(あがた)神社に古くから伝わる、
県(あがた)祭りと大幣神事とは、
いつ頃から行われるようになった、
どういうお祭りなのか、
そして、
なぜこのあがた祭りが奇祭と呼ばれるのか、
また、あがた神社の御祭神とそのご利益についてをまとめました。
宇治 県神社の県祭りとはどんな奇祭
あがた神社でもっとも有名な祭礼『あがた祭り』は、
奇祭としても有名で、宇治の闇夜を彩ります。
京都の宇治・平等院の、
鬼門に鎮座する平安時代創建の古社・県神社の例祭です。
「暗闇祭」とも呼ばれる県(あがた)祭は、
毎年6月5日の夜から6日の未明にかけて行われます。
祭礼の見どころは、
梵天(ぼんてん)というお祓いの時に使う御幣の白紙に、
木花開耶姫命のご神体を移し、
真っ暗な宇治の街を練り歩く「梵天神輿」のお渡りです。
球状にした奉書紙約1,600枚を約2.5メートルの青竹の先に挟み込んだ、
神の依り代である梵天を載せた神輿が奉安所を出発します。
5日の深夜11時、
本殿で明かりを消して「神移し」が行われ出御します。
氏子町内の家々は灯りを消して、
御祭神を遷した梵天のお練りを待ちます。
「ブン回し」や「差し上げ」などをして、
再び境内に帰り、深夜1:00頃に還幸祭は終了します。
この祭礼は江戸時代から続き、
京の茶どころ・宇治の初夏の訪れと、
新茶の季節到来を告げる風物詩となっています。
この祭事は、灯りのない闇の中で行うことから
「暗闇の奇祭」と呼ばれ、
神秘的で、
また神輿を猛スピードで回転させる「ぶん回し」の様子はとても勇壮で、
見物客から歓声が上がります。
祭礼当日(6月5日)は境内に700もの露店が並び、
全国から約10万人の見物客が訪れます。
日程 6月5日
午後 11:00~深夜 1:00頃
宇治 県神社の大幣神事はいつ行われる神事
大幣神事は、6月8日の午前中に宇治のまち中で行われる、
中世にさかのぼる厄祓い神事です。
大幣神事はあがた祭りの興奮冷めやらぬ二日後(6月8日)に行われる神事で、
藤原氏が宇治の平穏を祈願して斎行した、
道餐祭(みちあえのまつり)が起源の厄祓い神事です。
大幣殿を出た大幣は、幣差(へいさし)、神馬などの多くのお供と共に、
厄払いや五穀豊穣を願って、あがた通り、新町通り、本町通りと、
町の角々でお祓いの儀式をしながら進みます。
三つの傘を付けた大幣に厄を集めるため、
県神社から県通り、宇治橋通り、本町通りの順で神事を行いながら、
大幣と昔装束の行列が町を巡り、
宇治の街を巡幸して疫神を集めて回ります。
大幣は神社に帰着後、大幣殿前で3回転させ、
地面に叩きつけた大幣を、
12人の幣差が県通りを宇治橋まで引きずって走り、
宇治橋の橋の上からお祓いをした疫神とともに川に流します。
宇治川の橋の上から投げ捨てて、疫病を流し去る豪快な場面が見どころです。
神馬の馬馳などと共に「大幣さん」と町の人々から慕われる、
宇治の初夏の祭りです。
大幣を見守る騎馬神人や風流傘など行列の様子や、
一の坂で行われる馬馳せの儀などに、
古式ゆかしい中世の面影をよくとどめています。
あがた祭り・大幣神事は、宇治市無形民俗文化財に指定されています。
日程 6月8日
午前 10:00~12:00
宇治 県神社の歴史と由来 県神社への交通アクセス
宇治 県神社の歴史と由来
平等院の表参道から歩いて5分の場所に位置している、あがた神社ですが、
神社の名前にも付けられている「あがた」とは、
皇室の直轄地のことで、
さらに古くは、近畿地方に散在していた氏族の領地でもありました。
県神社が平等院の鬼門にあたることから、
鎮守社として永承七年(1052年)に、
藤原頼道によって創建されたと書物に記されています。
御冷泉天皇永承七年(1052年)、
時の関白 藤原道長が別業(別荘)を寺院である平等院とする際、
平等院 建立にあたり、県神社を平等院総鎮守とし、
藤原氏の繁栄を祈誓したとされています。
明治維新までは大津市の三井寺円満院管理下にありましたが、
維新の後、神仏分離令によりその管理を離れ今日に至っています。
しかし、言い伝えによるとそれより以前からこの地に神社があり、
この神社の創建年代等については不詳です。
また周囲はたくさんの木々が生い茂っていることから、
「あがたの森」として人々に親しまれていました。
今日でも境内には大木や豊かな緑が広がり、
当時の様子がうかがえます。
“縣(県)”と書き“あがた”と読みます。
縣(県)とは古墳時代に、
畿内の朝廷は国造(くにのみやつこ)に地方を支配させていましたが、
それとは別に、朝廷が直接支配していた土地のことです。
縣(県)の責任者が県主[あがたぬし]で、
朝廷に食料や物資を納めていました。
宇治 県神社の御祭神とご利益
県神社は、
天孫天津彦彦(あまつひこひこ)火瓊々杵尊(ほのににぎのみこと)の妃、
木花開耶命(このはなさくやひめのみこと)を奉祀し、
「あがた」の名の通り神代以来当地の 守護神でした。
今も県神社は、神社のご祭神として、良縁結びの神様として名高い
「木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)」が祀られています。
木花開耶姫命は『古事記』に登場する絶世の美女で、
御祭神として祀られているだけあって、
境内には大きな美しい桜があり、大切にされています。
県神社は、
御祭神、木花開耶姫命の故事にのっとり、
昔から女性の守護神として皆さまから信仰されており、
現在も良縁・安産・子授けのご利益があるとされています。
県神社への交通アクセス
あがた神社へは、
JR宇治駅より 徒歩7分
京阪宇治駅より 徒歩15分です。
住所 京都府宇治市宇治蓮華72
お問い合せ 0774-21-3014
拝観時間 随時
拝観料 なし
あとがき
日本にはたくさんの神様が居られて、
その土地を守り、民衆を守ってきました。
そしてそこにはいろんな文化が生まれ、
お祭りもいろいろな形で残っています。
温故知新
各地のお祭りを見るとき、古の時を知ることができます。
県神社