北斎とジャポニズム展開催日程 北斎が西洋に与えた衝撃と海外の反応とは?

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今、話題の葛飾北斎展
北斎とジャポニズム展が、国立西洋美術館で開催されます。
『HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』というテーマの北斎展で、
北斎と西洋美術との繋がりを探ります。
画狂老人と称された北斎が西洋に与えた影響と、
海外での反応には現代でも通じる興味深いものがあります。

  

北斎とジャポニズム展 2017年~2018年の開催日程

北斎とジャポニスム 『HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』が
国立西洋美術館で開催されます。

北斎とジャポニズム展の会期は
2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)

開館時間は
午前9時30分~午後5時30分
毎週金・土曜日:午前9時30分~午後8時

ただし11月18日は午後5時30分まで
※入館は閉館の30分前まで

休館日は
月曜日(ただし、1月8日(月)は開館)
2017年12月28日(木)~2018年1月1日(月)、1月9日(火)

観覧料金は
当日券 一般1,600円 大学生1,200円 高校生800円

前売/団体:一般1,400円 大学生1,000円 高校生600円

上記前売券は2017年8月19日(土)~2017年10月20日(金)まで販売
ただし、国立西洋美術館では2017年8月19日(土)~2017年10月19日(木)まで販売

19世紀後半、日本の美術が、西洋で新しい表現を求める芸術家たちを魅了し、
“ジャポニスム”という現象が生まれました。

なかでも最も注目されたのが、天才浮世絵師・葛飾北斎(1760-1849)。

その影響は、モネやドガら印象派の画家をはじめとして欧米の全域にわたり、
絵画、版画、彫刻、ポスター、装飾工芸などあらゆる分野に及びました。

北斎とジャポニズム展は、
西洋近代芸術の展開を“北斎とジャポニスム”という観点から編み直す、
日本発・世界初の展覧会です。

国内外の美術館や個人コレクターが所蔵する
モネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガンをふくめた西洋の名作約200点と、
北斎の錦絵約30点、
版本約60点の計約90点(出品点数は予定、会期中展示替えあり)を
比較しながら展示します。

北斎という異文化との出会いによって生み出された西洋美術の傑作の数々を堪能しながら、
西洋の芸術家の眼を通して北斎の新たな魅力も感じていただけることでしょう。

北斎とジャポニズムに見る北斎が西洋に与えた衝撃

西洋人が北斎の絵に注目した当初、興味の対象は美術的価値よりも、
日本という国だったのかも知れません。

北斎の作品は、日本という国と日本人を知るための、
格好の窓口として機能したのではないでしょうか。

それまで扉を閉ざしていた未知の国に対する好奇心が、
西洋人の興味を奮い立たせたのではないだろうかといわれています。

北斎の絵を通して日本人の日常に触れ、『神秘の国』への理解を深めるうちに、
西洋人は絵そのものの魅力に心を動かし始めたのだと思います。

それは北斎の絵に通底する独特の視点と、
ユーモアセンスならではのことだったのでしょう。

北斎の絵で驚くのは、まず筆の巧みさです。

しかし、それ以上にパワフルな引力は、
技術を超えた味わいにあると思います。

ありきたりなシーンも、北斎の目が捉え、北斎の筆で表現すると、
不思議と魅力的で奥深いものになるのです。

北斎の絵を見るたびに、
北斎という人は、人の気持ちを深く知る、
とても人間臭い人だったのではないかとも思えます。

絵師・彫り師・摺師に分かれた分業体制で完成される版画よりも、
絵師の生の息遣いが宿る肉筆画の方が、さらにそう感じさせます。

北斎が亡くなる2年前に描いた作品『雷神図』
この絵のインパクトは圧倒的で、
88歳でこんなにエネルギッシュな絵を描けるのですから、
北斎はやっぱりすごいのです。

今まで西洋人が眼にしたことがなかった画風、
それが北斎の作品が西洋人に与えた衝撃ではないでしょうか。

多色摺木版画で知られている北斎ですが、
北斎が実際に筆で描いた肉筆画からは、
錦絵とはまたひと味違ったリアリティーが感じられます。

北斎の絵に代表される日本画には、現代人の心を癒してくれる、
日本独特の文化や価値観が込められています。

日本画は、西洋絵画と違い、遠近法をあまり使わないことは知られていますが、
絵の構図の中に中心がないのも大きな特徴のひとつです。

日本画の場合、描かれる人物の数は偶数であることも多く、
誰が主役なのか、誰を最も目立たせたいのか、判然としません。

主役が目立って描かれる西洋画とは大きな違いですが、
なぜこのような違いが生じたのでしょうか。

このような日本画特有の構図が生まれたのか、
その背景には、日本固有の文化である『等価の精神』があると言われています。

山や川といった自然も、そこに生きる動植物、そして人間もすべて等価値だという、
強烈な平等意識が表現されていて、その精神が、無意識に西洋画との違いを作り出しました。

この独特の平面性や意外性にヨーロッパの芸術家が注目し、
北斎の作品をはじめとする日本画に世界から興味が集まったのです。

格差が問題になっている現代において、北斎の絵を見ることは、
もう一度、等価の精神を学ぶ、良い機会なのかもしれません。

たとえば、葛飾北斎の『赤富士』にも、等価の精神は良く表れていて、
朝焼けの赤い富士山が描かれています。

一見、それが主役のように見えますが、この絵を上下さかさまにしてみると、
赤い富士山に対して、青い空と雲の描かれたスペースが、
ほぼ同面積であるのがよくわかります。

まさに、山も空も等価であると表現しているようです。

等価の精神は、日本画に固有の「輪郭線」にも表れています。

人物を描く場合も、背景を描く場合でも、
それらを縁取っている輪郭線の太さや強弱はほぼ同じで、色もすべて黒一色です。

そこにも、日本人の価値観が表現されています。

北斎とジャポニズムに見る海外の反応

19世紀後半から20世紀にかけて、
西洋のアートシーンはジャポニズムに染まっていきました。

契機tなったのは、それまで諸外国との通商を拒んでいた日本が、
国を開いたということではないでしょうか。

日本の文物が急激に流入したフランス・イギリスに始まるこの『日本文化ブーム』は、
やがて米国と欧州全域に伝播し、
その影響は文学や音楽など芸術各分野にも及びました。

『神秘の国』の美術作品が、
「エキゾチシズム」ゆえにもてはやされたのでしょうか?

ただ単に珍しいから持て囃されたというのとはちょっと違ったようです。

西洋は、独自な進化を遂げてきた日本の文化をヒントに、
自分たちの伝統を革新し、
そこから新たな美的表現を見つけようとしたのだと思います。

北斎の作品に衝撃を受け、伝統的なタブーを打破して行ったのだと思います。

18世紀、ヨーロッパの貴族に広まったシノワズリ(中国趣味)は、
中国の家具や陶磁器のデザインの素材を真似るなど、
いわば物の需要に留まるものでした。

その点、ジャポニズムは西洋の芸術家たちが日本美術の特質を消化し、
自らのスタイルの革新に繋げました。

ルネサンス以来の伝統に息苦しさを覚えていた彼らを解き放ち、
表現の手法や形式の多様化を促した出来事だったのです。

この時、とりわけ影響力を発揮したのが、北斎の作品群に他ならないのです。

ジャポニズムの最初期(1850年代後半)、ヨーロッパ人の目に触れた北斎作品は、
『北斎漫画』に代表される絵手本だったのです。

当時、日本に駐在した外交官たちは、その見聞を記した本を盛んに著作しましたが、
日本人の日常や習俗を紹介する上で、それらを生き生きと切り取った北斎の絵手本は、
格好の『説明図』だったのです。

当初は作者の名前も載らないまま、
ただ絵だけが“コピペ”されただけでした。

しかし、北斎の知名度はじわじわと高まり、
1860年代の終りには日本を代表する芸術家として認知されたのです。

歌川広重が脚光を浴びたのはジャポニズム初期で、
喜多川歌麿や東洲斎写楽は1880年代以降ですが、
北斎は時期や地域を問わず人気を集めました。

庶民も浮世絵に親しんだ当時のパリで、
美の新境地を模索する印象派などの画家たちが、
北斎作品に注目したのは、自然の成り行きだったと言えます。

実際、ドガ・モネ・セザンヌなど多くの画家の作品から、
隠しきれないその影響が見て取れます。

たとえば、ドガの人物表現では、旧来の西洋美術では考えられないそのスタイルに、
北斎の人物画が重要な示唆を与えたのは間違いありません。

西洋美術の伝統では、人体の描写は神聖な営みで、
許されるのは神に賜った美しい体を美しく描くことだけでした。

“ぽっちゃり”を強調した滑稽なポーズなどは、人間への冒涜とみなされました。

そんな堅苦しい決まりごとに縛られず、
人間の多様な動きをありのままに描いた北斎の作品に、
ドガは心に響くリアリティ新時代の表現を見たようです。

ほかにも、モネの遠近法に捉われない空間表現や、
セザンヌなどが手がけた同じモチーフの多様な表情を写す連作、
自ら歩み寄って花々の野生を捉えたゴッホの一連の作品など、
北斎にインスパイアされたと思われる手法を採用した画家や作品は少なくありません。

西洋美術が新しい時代に向かうときに、
北斎が背中を押した形になったようです。

ここで注目すべきなのはいずれもが、
西洋美術が長らく守ってきた伝統的な『型』を打ち破るチャレンジだったのでしょう。

触れてはならないところに触れてしまったそれらの作品は、
初めこそ見るものを戸惑わせたのですが、
時代の空気は反発にも増して共感を広げ、
追随する画家を増やすことになったのです。

西洋美術に新風を吹きこんだジャポニズムを、
誰よりも北斎の作品が励ましたのは何故なのでしょう?

北斎の強みは、一つにはバリエーションの豊富さで、
人物や動植物、風景など対象も多彩なら、版画から肉筆画まで、
幅広い手法を自在にこなす技術といえます。

いきおい盛んに参照、引用されたことで、対象物への親密でユーモラスな視線、
大胆な構図といった北斎作品の特質が、
画家たちの創作意欲を刺激したのではないでしょうか。

あとがき

葛飾北斎という人は、
凄い絵を凄い数残していますが、
本当に凄いのは、北斎自身の生き様だと思います。
亡くなってからの自分に対する評価を知ったら、
北斎はどう感じるのでしょうね。