公証人や公証人役場には、
普段あまりお世話になることがないように思います。
私達の思いや権利を守るとき、
頼りになる法律のプロである公証人がどのような事を行っているのか、
知っておく必要があると思います。
実際、公証人がどのようなことをするのか、
いざというとき、お世話になるかもしれませんので、
仕事内容も知っておくべきですね。
また、公証人になるには、
どのような資格が必要なのかも解説したいと思います。
公証人とは何をする人?
公証人は、法務大臣が任命する公務員です。
当事者や関係人の委託を受けて、公正証書を作成したり、
私署証書や定款に認証を与える権限があります。
法務局や地方法務局に所属し、
管轄区域内に公証人役場を設けて仕事をしています。
こうした公証人役場は全国に300か所ほどあり、
550名前後の公証人がいます。
■公証人役場とは?
公証役場は法務局管内に置かれる官公庁です。
公証役場は、主に以下の3つを行っています。
・公正証書の作成
・私署証書や会社等の定款に対する認証の付与
・私署証書に対する確定日付の付与
などの、仕事を行っています。
公証人の仕事内容とは何か?
公証人の仕事は、大きく3種類に分類されます。
■公正証書の作成
遺言や離婚、任意後見契約、
金銭消費貸借契約などについての「公正証書の作成」。
公正証書とは、
広義では公務員が職務上の権限に基づいて作成した文書のうち
証書にあたるものを指し、
このうち公証人法などの法律に基づいて公証人が作成する
権利義務に関する事実が記載された証書が狭義の公正証書にあたります。
普段、我々がこの文書名を用いるときは、狭義の方を指します。
この文書をつくってくれる公証人は、
各地にある公証役場と呼ばれる施設にいます。
公証人のほとんどは裁判官や検察官、弁護士などの実務経験が長い者で、
彼らによってつくられた証書は強い証明力と強制力を持ち、
同時に法的に高い安全性と信頼性を持ちます。
■私署証書や会社等の定款に対する認証の付与
契約書や会社の定款などの文書に対する「認証」。
私法上の法律行為や法律行為に関連性のある事実を記載した文書
(典型的なものとしては、契約、その取消、解除の意思表示など)
について、公証人が、
当該文書が作成者(作成名義者)の意思に基づいて作成されたこと。
すなわち当該文書上の作成者の署名(署名押印)又は記名押印が
真正なものであることを証明することを言います。
■私署証書に対する確定日付の付与
私文書に対する「確定日付の付与」。
確定日付とは、変更のできない確定した日付のことであり、
その日にその証書(文書)が存在していたことを証明するものです。
公証役場で付与される確定日付とは、
公証人が私書証書に日付のある印章(確定日付印)を押捺した場合の
その日付をいいます。
文書は、その作成日付が重要な意味を持つことが少なくありません。
したがって、
金銭消費貸借契約等の法律行為に関する文書や
覚書等の特定の事実を証明する文書等が作成者等の
いろいろな思惑から、
その文書の作成の日付を実際の作成日より遡らせたりして、
紛争になることがあります。
確定日付は、
このような紛争の発生をあらかじめ防止する効果があります。
たとえば、お年寄りが将来の財産管理などを心配した場合、
家族や弁護士等の信頼できる人物に財産管理等を委ねるために
「任意後見契約」を結んで公正証書を作成しておくと、
仮に認知症になった場合でも本人の財産や権利は守られ、
安心した生活を送ることができます。
また、
個人や会社が作成した契約書の日付に間違いないことを公証人が認め、
確定日付を付与すると、
将来、日付を書き換えた契約書が紛争の原因になるのを防止できます。
このような仕事は、
いずれも当事者や関係者の依頼を受けて行うもので、
公証人は、
市民の権利を保護してトラブルを未然に防ぐことを目的として
職務にあたっています。
これらが、公証人の主な仕事内容となります。
公証人になるにはどのような資格が必要か?
公証人は、
裁判官・検察官・弁護士などの法曹有資格者や法律実務家の中から、
法務大臣によって任命される広義の国家公務員です。
ただし国からの給与制ではなく、
依頼人からの手数料が収入源である独立採算制であるという点で
通常の国家公務員とは異なっています。
事務員の給与や地代家賃も自ら支払う自営業者なのです。
■公証人になるには?
公証人になるには、
公証人試験合格、法曹からの任命、
学識経験者からの任命の3つのルートが存在します。
しかし、
実際に公証人として活躍しているのは
法曹からの任命によるものがほとんどです。
実務経験が30年以上あることが条件となるため、
公証人の多くは高齢であることが特徴です。
なお副業は禁止されているため、
任命された時点で士業登録があれば抹消しなければなりません。
公証人が作成、認証した書類は、
公的に認められた正式な書類として扱われます。
時には判決と同等の効力を持つ程に影響力を持った書類となるのです。
それだけ重大な権力を与えられている公証人は、
高度な知識と長年の経験による信頼が必要となります。
全国には約500名の公証人が在職しており、
年間1名任命されるか、されないかの狭き門となっています。
また公証人の平均年収は高く、
案件の多い都市部になると3,000万円を超えると言われています。
そのため法曹界では非常に人気の職なのです。
しかしこれまで公証人試験は一度も実施されたことがなく、
法曹からの任命が慣習となっています。
実際に公証人の大多数を占めるのが
定年後の裁判官や検察官、元法務局長であることから、
法曹界の天下り先であるとの見方が強くあるのです。
あとがき
私は公証人という存在を、ドラマでしか知りませんでした。
地域によっては公証役場が少なく、
気軽に行けない場合もあります。
また手続きも馴染みがなく複雑であるため、
よくわからないという方も多いと思います。
基本的に公証役場での手続きは
弁護士や行政書士が窓口となって代行してくれますので、
お近くの事務所へ相談する事をおススメします。