秋の七草とは何?春の七草のように食べられないの?夏や冬の七草は?

秋の行事

秋の七草とはどんな種類があるのでしょうか
春の七草は七草粥にして食べられるけど
秋の七草は食べられないのでしょうか
また
夏の七草とか
冬の七草というものはないのでしょうか
それは食べられるのでしょうか
なぜあまり知られていないのか
知りたくないですか?
ちょっとした雑学としての
ほんのトリビアです

  

秋の七草とは何で どんな種類があるの?

秋の七草には どのような種類があるのでしょうか

秋の七草とは
 撫子・葛・桔梗・萩・藤袴・尾花・女郎花
この七つのことを言います

古くから短歌などに詠まれ 秋の代表的な草花として親しまれています

秋の七草は 春の七種と違い 秋の七草を使って直接何かをするという行事は特にありません

文学の世界では 秋の野の花が咲き乱れる野原を「花野」(はなの)といい
花野を散策して短歌や俳句を詠むことが古来より好んで行われていました

秋の七草はそれを摘んだり食べたりするものではなく
観賞するためのものであって
そのために「秋の七草がゆ」という食べ物も存在しません

しかし 秋の七草にはそれぞれの草花に 薬効成分があることが知られています

・撫子
八月~九月にかけて ピンク色の小さな花が咲きます
花のふちが糸状に細かく裂けています

・葛
赤紫色の花が咲き 根は葛粉や漢方薬の『葛根湯』として用いられます

・桔梗
星形のような青紫色の花を付け 根は咳止め用の『晒桔梗』という薬に用いられます

・萩
野山に自生する低木で 紅紫色の小さな蝶形の花を付けます

・藤袴
八月~九月に淡い紅紫色の小さな花を付けます 昔から乾燥させて香料として使われていました

・尾花
別名はススキ 山野に自生し 根茎は解熱や利尿に効果があるとされていて
広く薬用にも用いられています

・女郎花
黄色い美しい小花を付け 根は炎症を抑える『敗醤根』という薬に使われます

秋の七草とは何?春の七草のように食べられないの?

皆さんご存知のように 春の七草は『七草粥』として
正月七日に食べられます

元々 七草とは 秋の七草のことを言い
春の七草は“七種”と書き ナナクサと読まれました

芹・薺・御形・繁縷・仏の座・菘・蘿蔔 と書き
セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ と読みます

語呂合わせのようにして暗記した記憶がありますが 
それもお正月の七日に『七草粥』として食べる機会があったからで

秋の七草にはそのような習慣がなく なかなか覚えられませんでした

春の七草は この7種の野菜を刻んで入れたかゆを七草粥と言い
食べられる食材とされていますが

邪気を払い万病を除く占いとして食べるといった 呪術的な意味ばかりでなく
お正月の御節料理で疲れた胃を休め
野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能もあるのです

七種の前の晩 
まな板に乗せて囃し歌を歌いながら包丁で叩き 当日の朝に粥に入れる
囃し歌は鳥追い歌に由来するもので
これは七種がゆの行事と 豊作を祈る行事が結び付いたものと考えられています

歌の歌詞は
「七草なずな 唐土の鳥が 日本の土地に 渡らぬ先に 合わせて バタクサバタクサ」など
地方により多少の違いがあるのですが

少々 おどろおどろしい呪文のように聞こえるのは 私だけでしょうか

秋の七草について書かれた書籍があります

“山上憶良が
「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 また藤袴 朝がほの花」(『万葉集』)とうたいあげ
以来
千数百年にわたり秋を代表する植物として日本人にめでられてきた七種の草花
その知られざる伝承を掘り起こし
七草の生態と人々とのかかわりの歴史をたどりつつ
野に咲く小さな草花に心を寄せて季節に感応した日本人の自然観を見なおし
植物と人間との未来への共生のみちをさぐる”

有岡 利幸先生著の
ものと人間の文化史 145『秋の七草』という書籍が
法政大学出版より出版されています

春の七草は どちらかと言えば田んぼの畦道に生えている雑草が多く
疲れた胃を休めるとか 野菜不足を補う効能は言われていますが

秋の七草の方が 漢方として薬効成分の効能・効果が 私たちの生活に役立っています

秋の七草にある草花は ススキを除いて どれも可憐で美しい花を付けます
また
ススキは茅(かや)とも呼ばれ お月見の時に飾り 
豊穣を願う意味や魔除けの力があるとされています

秋の七草は 食べることはできないようですが
鑑賞用として私たちを楽しませてくれる役割を持っています

秋の七草や春の七草のように 夏や冬の七草はあるの?

昔の七草というのは「春の七草」や「秋の七草」と異なり

稲・粟・黍・稗・胡麻・小豆・蓑米といった穀物が主でした

夏の七草には二種類があり

昭和初期に勧修寺経雄が詠んだ和歌
「涼しさは よし い おもだか ひつじぐさ はちす かわほね さぎそうの花」と
夏の七草について詠んでいます
葦・藺・沢瀉・未草・蓮・河骨・鷺草 と書きます

・葦(ヨシ)は イネ科の多年草で“アシ”とも呼ばれますが
「アシ」が「悪し」を連想させ、縁起が悪いとして「ヨシ」となりました
葦の茎で作ったすだれは葦簀(よしず)は 夏の日よけとして用いられています

・藺(イ)は単子葉植物イグサ科の植物で 畳表を作るのに使われています

・沢瀉(オモダカ)は オモダカ科オモダカ属の水生植物で
人の顔に似た葉を高く伸ばしている様子を指して「面高」とされたとも言われています

・未草(ヒツジグサ)は スイレン科スイレン属の水生多年草で 池や沼に広く分布していて
6月~11月頃 未の刻(午後2時)頃に白い花を咲かせることから
ヒツジグサと名付けられたといわれていますが 実際は朝から夕方まで花を咲かせます

・蓮(ハス)は 双子葉植物の科の一つで多年生の水草です
水芙蓉(すいふよう、みずふよう)ともいわれ 地下茎は根菜として食する「蓮根」です

・河骨(コウホネ)は スイレン科の植物で
根茎が骨のように見え コウホネ(河骨・川骨)の名の由来となっています
根茎を縦割りにしたものを川骨(センコツ)と言い
解熱・鎮痛を目的とした漢方方剤に配合される生薬です

・鷺草(サギソウ)は ラン科サギソウ属 湿地性の多年草の1種で
先端近くに1-3輪の白い花をつけます 
この唇弁の開いた様子がシラサギが翼を広げた様に似ていることが和名の由来です

もう一つの 夏の七草として
日本学術振興会学術部・野生植物活用研究小委員会が
戦時中の食糧難の時節にも食べられる植物として 7種類の植物を「夏の七草」に選定しています

・藜(アカザ)は アカザ科アカザ属の一年草で 畑や空地などに多い雑草です
葉はゆでて食べることができ 同じアカザ科のホウレンソウによく似た味がします
茎葉を乾燥して 煎じた汁を口の中に含めば虫歯の痛みを治し
1日3回服用すれば咽の痛みに効用があるとされ
生葉の搾り汁は毒虫などに刺された時塗ると痛みが止まるとされています

・猪子槌(イノコヅチ)は ヒユ科イノコヅチ属の多年草で
日のあまり当たらない場所に生える雑草です
イノコヅチの根を乾燥させて作った漢方薬を牛膝(ゴシツ)といいます

・莧(ヒユ)は ヒユ科ヒユ属の一年草で
葉鶏頭(ハゲイトウ)または アマランサスとも呼ばれています
アマランサスの食用品種の総称的に呼ぶこともあります

・滑莧(スベリヒユ)は スベリヒユ科スベリヒユ属の多年生植物で
同属にはマツバボタンなどが知られています
スベリヒユおよびその近縁の種は健康食品としても使われ
ω-3脂肪酸を多量に含む植物として知られています
茹でて芥子醤油で食べる一種の山菜として扱われ 干して保存食にもされていました

・白詰草(シロツメクサ)は シャジクソウ属の多年草で
別名はクローバーとしてよく知られています

・姫女菀(ヒメジョオン)は キク科ムカシヨモギ属の植物で 白い花を咲かせる一年草です
驚異的な繁殖能力をもっていて 駆除するのがとても難しい

・露草(ツユクサ)は ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物です
朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから
「露草」と名付けられたという説があります

冬の七草と呼ばれるものは あまりないようですが
冬の七草ではなく 冬至の七種というものがあります

冬至は二十四節気の一つで 概ね12月22日が冬至です
(ここ最近はオリンピックイヤーの冬至が12月21日になるようです)

北半球ではこの日が一年のうちで最も昼(日の出から日没まで)の時間が短いとされている日です

冬至の日は かぼちゃを食べ ゆず湯に入るという風習がありますが
冬至の七種と言われる食材があります

・カボチャ(なんきん)
・レンコン(れんこん)
・人参(にんじん)
・銀杏(ぎんなん)
・金柑(きんかん)
・ 寒天(かんてん)
・うどん(うんどん)

「ん」のつくものを食べると「運」が呼びこめるといわれています
冬至の七種とされているこれらの食材には“ん”という字が二つずつ」入っていることから
運が2倍になる食べ物と言われているのです

「ん」のつくものは「運盛り」といわれて縁起をかついだり
また「いろはにほへと」の47音が「ん」で終わることから
「ん」が物事の終わりをあらわすといった「一陽来復」の願いも込められているのです

ですから冬至になると「ん」のつく食べ物が好まれるのですが
なかでも「ん」が2つつく冬至の七種(ななくさ)とよばれる食べ物が
運が2倍になる食べ物と言われているのです

もちろん
「運盛り」は縁起かつぎだけでなく
栄養のある食べ物を食べて寒い冬を乗りきるための先人の知恵でもあり
特に なんきん・にんじん・れんこんなどは ごく身近な旬の食材なので
毎年知らないうちに冬至に食べていたのかもしれません

これを知ったうえで冬至の七種を食べると
「運がもらえた!」と思えて
次の年が幸運に恵まれるのではないでしょうか

まとめ

世の中に存在する植物には それぞれの役目があって
その美しさで人々の心を癒す役目や
繊維を利用して 布となり人々の身体を包む役割
食することで 栄養となり 
薬効成分として 人々の苦痛や痛みを和らげたり

秋の七草や春の七草はもちろん
夏に七種や冬の七種といった植物のチカラは
先人の知恵として現代の私たちに伝えられているのですね