歌舞伎の衣装で早替わりはケレンの一種で早拵えと引き抜き ブッカエリがある

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歌舞伎の舞台は素晴らしいですね!

お話の筋はもちろんですが、
衣裳の美しさは世界に誇れるものです。

歌舞伎を見ていて、ケレンと言われるいろいろな仕掛けには、
目を見張るものがあります。

そんな歌舞伎の衣裳の特徴や、
歌舞伎や舞踊に見られる衣裳の早替わり、
早ごしらえの着替えや引き抜き、ブッカエリについて説明し、
その手法の秘密をお伝えします。

早替わりの手法を知れば、
さらに歌舞伎を見るのが面白くなりますよ!

  

歌舞伎の衣装で早替わりはケレンの一種です

歌舞伎の衣裳で早替わりするというのはケレンの一種です。

ケレンとは『外連』と書き、
歌舞伎の舞台で『宙乗り』『早替わり』『本水』などの演出の手法のことで、
舞台で使われる道具の仕掛けや、
衣装の早拵え(はやごしらえ)や引き抜き、ブッカエリといった手法も、
ケレンの一種です。

そもそもケレンという言葉は、
義太夫節(ぎだゆうぶし)の用語で、
他流の節で語る事を「外連(けれん)」とよんだのが最初でした。

ケレンには、大道具(舞台装置)や小道具(持ち道具)などに仕掛けを施す、
本水や屋台崩し、仏壇返し、戸板返し、欄干抜けがあり、
衣装の仕掛けには、早替わりの手法として、
早拵え(早着替え)や引き抜き(玉抜き)、ブッカエリなどがあります。

ケレンの一種、衣装の早替わりは、
元禄歌舞伎の舞台で、十八世紀の終わりにはすでに行われていました。

十九世紀の半ば、文化文政時代には、
四代目の鶴屋南北による『天竺徳兵衛韓噺』や『東海道四谷怪談』、
『於染久松色読販』などの演目で、早替わりの手法をふんだんに用い、
評判を集めました。

その後、
『仮名手本忠臣蔵』や『夏祭浪花鑑』といった、
旧作品の演出にも使われるようになりました。

歌舞伎の舞台では昔から使われてきた手法ですが、
本道ではないとか、曲芸的だということで、
明治以降、歌舞伎の演出から排除されるようになり、
早替わりという手法も軽視され、一時期衰退していきました。

それでも関西では、手法を凝らした舞台が、
初代市川右團次や二代目實川延若らによって、辛うじて継承されてきました。

その時代ケレンの手法は、見世物的演出法だと考えられがちでしたが、
歌舞伎の舞台を見る人にとって、この意表を突く演出法は、
見た目に派手な面白さがあり、観る人を釘付けにします。

戦後しばらくたって、
1970年代頃から三代目市川猿之助が、
一連の猿之助歌舞伎でケレンの手法を多用したことで、
舞台装置の仕掛けや衣装の早替わりは復権を果たしました。

いたるところにケレンの要素を盛り込んだスーパー歌舞伎では、
演出上不可欠な存在となっています。

スピード感やスリルを感じられるケレンの演出に対して、
正統派ではないという軽侮の意味を含めて使われてきた言葉でしたが、
本来、歌舞伎というもの自体が、
人々を驚かせ楽しませるという要素を持った演劇という見方もあって、
今では歌舞伎を観賞する時の大きな楽しみの一つとなっています。

歌舞伎舞踊の中にも使われ
ケレンを用いた演目に『変化もの』というカテゴリーが誕生しました。

歌舞伎の衣装の早替わり 早拵えと引き抜きの仕方

歌舞伎の衣裳の早替わりは、どういう仕掛けになっているのか、
これは企業秘密なのかも知れませんが、
歌舞伎を鑑賞する人にとっては、とても興味深いところです。

衣装の早替わりには大きく分けて、
『早拵え(はやごしらえ)』と『引き抜き(玉抜き)』があります。

『早拵え(はやごしらえ)』の仕方

『早拵え(はやごしらえ)』は、
演目の途中で、演者が舞台袖や、舞台上の木などの物陰に引っ込み、
衣裳を着替えることです。

役柄のシチュエーションが変わったことを表わすのですが、
スピードと鮮やかさが求められるので、
舞台袖や道具裏、揚げ幕内で複数のスタッフによって、
化粧から扮装まで手早く行われる早拵えは時間との勝負です。

その間、舞台上では間奏が弾かれていたり、
間狂言がある場合もありますが、
身体が似ている役者を時間稼ぎに使う「吹き替え」など、
様々な工夫が行われます。

早ごしらえはスピードが命です。

たくさんのスタッフが息を合わせて瞬時に、
衣裳やかつら、化粧を替えていきます。

踊り手さんが次に舞台へ戻った時の、
客席の驚きやどよめきがスタッフの喜びかもしれません。

変化物(へんげもの)とは、
一人の踊り手が早替りで次々と異なる役柄に扮して踊るもので、
江戸時代後期には大いに流行しました。

早替わりでおすすめは、舞踊の『鷺娘』です。

引き抜きやブッカエリといった早替わりの手法を見ることが出来ます。

『引き抜き(玉抜き)』の仕方

『引き抜き(玉抜き)』の仕掛けは、
下に着ている着物(後から見えるきもの)の上に、
もう一枚の着物を被せ、
玉糸を抜くことで瞬時に着物を着換えさせられるという手法です。

後から見えるきものに『かぶせ』というもう一枚の着物を、
玉糸で縫い留めます。

このかぶせの着物には胴裏だけが付けられ、
帯の下になるところで上下に分かれていて、
袖下(袂の丸みのある部分)も縫ってありません。

下に着ている着物には、八掛の出ぶきが付いていて、
出ぶきの部分とかぶせの端を玉糸で大きく縫って玉入れをします。

玉入れの玉は、綿を直径1.5㎝ほどに小さく丸め、
それを表の着物と同じ生地でくるみます。

玉糸は絹糸を強く撚り合わせた丈夫な糸に、
蠟を塗り、コテで浸透させて使います。

玉糸の中ほどに玉を縫って固定し、
それぞれ玉糸の両端を使って玉入れをします。

普通の引き抜きは、裾玉、袖口の玉、袖下の玉、振りの玉が2本ずつで、
8個の玉があります。

裾玉は、衣装の褄先から、一方は立て褄を衿先まで、
もう一方は、裾の出ぶきをすくうようにして裾の背縫いまで縫い、
残りの糸は上側に逃がします。

袖下の玉糸は、かぶせの着物だけを、
袖の丸みあたりから、一方は袖口に向かって、
もう一方は振りに向かって玉を入れておきます。

その後、下になる着物にかぶせて、
袖口の玉は、袖口どまりから前後に分かれて被せと着物の八掛に玉を入れ、
袖山まで来たら下の着物の裏側に逃がします。

振りの玉入れは、振り下の部分、かぶせの着物が綴じられたところから、
前後に分かれ、かぶせの着物と下の着物のふきを綴じます。

玉入れをするとき、
玉糸の上を縫わないように、玉糸の縫い目は逆走しないように、
また、縫い目は一目が4~5㎝ほどの大きい針目で、
針目と針目が戻らないようにします。

舞台上で玉を引き抜くのは後見さんのお仕事ですが、
一瞬に衣裳が変わるところが見せ場ですので、
緊張する一瞬だと思います。

歌舞伎の衣装の早替わり ブッカエリの仕方

『引き抜き(玉抜き)』の中の一つの形として、
『ブッカエリ』という手法があります。

これは先の引き抜きと同じように玉抜きをするのですが、
上半身だけに仕掛けをする方法です。

『ブッカエリ』という言葉は、どんでん返しという言葉の意味と似ていて、
役柄としては、それまでの役から一転して本性をあらわす時に用いられます。

中に上半身だけの着物を着ていて、
その上にブッカエリの着物を着ています。

ブッカエリの上半身だけの着物と、被せるきものは同じ柄の着物で、
物の怪が憑いた様子をあらわすことが多く、
『道成寺』の場合はウロコ模様、
『鷺娘』は鷺の羽の模様の箔置きが多く使われます。

このブッカエリの着物は、肩山のところが切れていて、
そこに玉入れがしてあり、
玉を引き抜くことで前後に分かれます。

前後に分かれたブッカエリの着物の肩山ところの内側には、
玉を引き抜いて前後に分かれた時に、
畳み込まれていた布が垂れ下がって広がる仕掛けがしてあり、
衣裳がパラリとめくれ落ち、腰から下に垂れる仕掛けになっています。

肩山の玉を引き抜いたとき、
袖の部分が外れて落ちる仕掛けを『袖落ち』といいます。

肩山から袖山までが切れていて、
上半身の着物すべてがぶっかえる仕掛けもあります。

あとがき

歌舞伎役者が演じる歌舞伎は、さすがにプロだけあって、
見ている人を飽きさせません。

引き抜きやブッカエリも見どころですが、
以前に見た歌舞伎の仕掛けが忘れられません。

花道で行き交う人が、筵と傘で入れ替わって、
同じ人が舞台に。。。。

どうなってるんだろう???
家に帰って真似てみたことがありました。

歌舞伎って素晴らしいですね!