彼岸花を別名 曼珠沙華と呼ぶのは何故?球根に毒がある花言葉 恐怖の由来は?

秋の行事

秋のお彼岸に咲く彼岸花を、
別名 曼殊沙華と呼ぶのはなぜなのでしょうか?

また、彼岸花には、曼殊沙華のほかに、
怖ろしい別名やいろいろな呼び名があります。

彼岸花にそのような呼び名が付けられるのは、
彼岸花の持つ毒のせいなのでしょうか?

恐怖の別名を持つ彼岸花に付けられた、
花言葉の由来についてまとめてみました。

  

彼岸花を別名 曼珠沙華と呼ぶのは何故?

彼岸花とは?

彼岸花と言う名前は、
秋分の日を含む前後3日間の秋のお彼岸の期間だけに、
花を咲かせることに由来して名付けられました。

また、彼岸花を食べるということは、
“彼岸”つまり(死)を意味することから名付けられたという説もあります。

この彼岸花の別名には『曼珠沙華』という別名もあります。

彼岸花は、学名を『Lycoris radiate』といい、
ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。

原産地は中国で、今は日本全土でみられますが、
自生ではなく中国から持ち運ばれ、人為的に植えられたと考えられています。

彼岸花の開花時期は、9月の中頃から9月末にかけてと言われ、
その名の通りお彼岸の頃に花を咲かせます。

彼岸花には、赤のほかにも黄色と白い品種があり、
黄色の彼岸花(曼珠沙華)を『ショウキズイセン』
白い彼岸花(曼珠沙華)は『シロバナマンジュシャゲ』と言います。

彼岸花の怖い別名とは

彼岸花は、墓地で見かけることが多く、
『“彼岸”つまり(死)を意味する』と、なんとも怖いイメージの花ですが、
お彼岸のお墓参りに訪れた人が、よく見かけることから、
そういったイメージが定着しているのかも知れません。

彼岸花はその名の通りお彼岸の時期に咲く花で、
お彼岸はあの世とこの世が最も通じやすい時期ですから、
このことからも「死」を連想させるようです。

彼岸花の怖い別名はその他にも、
死人花(しにびとば)、幽霊花(ゆうれいばな)、地獄花(じごくばな)など、
恐ろしい異名がたくさん付けられています。

また、彼岸花の球根には毒があるのですが、
その彼岸花の毒性に由来した別名もあります。

毒花(どくばな)や痺れ花(しびればな)などは、
彼岸花の毒を口にすると、痺れが起こることや、
子供が誤って食べないようにという思いで、
わかりやすい別名をつけたのかも知れません。

彼岸花の呼び名

彼岸花の呼び名には、曼殊沙華のほかに、
死人花(しびとばな)
地獄花(じごくばな)
幽霊花(ゆうれいばな)
剃刀花(かみそりばな)
狐花(きつねばな)
捨子花(すてごばな)
毒花(どくばな)
痺れ花(しびればな)
天蓋花(てんがいばな)
龍爪花(りゅうそうか)
狐の松明(きつねのたいまつ)
狐のかんざし
葉見ず花見ず(はみずはなみず)
雷花(かみなりばな)
レッドスパイダーリリー
ハリケーンリリー
マジックリリー など、いろいろな呼び名があります。

また、彼岸花に関しては、

・彼岸花を家に持ち帰ると火事になる
・彼岸花を摘むと死人が出る
・彼岸花を摘むと手が腐る
・匂いが臭いので、手が腐る
・手が荒れる
・摘むと悪い事が起こる
・彼岸花が咲くと台風が上陸しない
・手がしびれたり、気持ち悪くなる
・さわると病気になる
・人の魂を吸う
・死んだ人の血を吸って赤い花になる
・お墓に飾ると天国にいける
・仏様の花だからとってはいけない
・亡くなった人の家への道標

など、言い伝えがたくさんあります。

曼殊沙華とは?

彼岸花が別名、曼殊沙華(マンジュシャゲ)と呼ばれるのは有名です。

曼殊沙華(マンジュシャゲ)とは、サンスクリット語で、「manjusaka」と書き、
仏教の経典に由来しています。

『曼殊沙華』とは、サンスクリット語で、
「天界に咲く花」「見る者の心を柔軟にする」という意味を持ち、
おめでたいことが起こる前に、天から花がひらひらとふってくる、
「良いことの前兆」だと語り継がれています。

また、仏教では曼殊沙華は白く柔らかい花とされ、
それを見たものの悪業を払うとも信じられています。

このように「曼珠沙華」の持つ意味と、彼岸花の名前が持つ意味とでは、
相反するものがあります。

彼岸花の別名 曼珠沙華の球根の毒とは?

彼岸花に「毒」があるということは有名です。

彼岸花は、花、葉っぱ、球根、茎、すべての部分に毒がある全草有毒で、
特に玉ねぎのような形をした鱗茎(球根)にアルカロイド系の、
リコリン、ガランタミン、セキサニン、ホモリコリンなどの、
毒が多く含まれている有毒植物です。

多量に摂取すると、嘔吐、吐き気、けいれん、痺れ、下痢など、
重篤な場合は中枢神経の麻痺を引き起こします。

球根一つに15mgのリコリンが入っており、
ネズミで換算すると1500匹の致死量に相当する量です。

彼岸花は第二次世界大戦中、飢えを凌ぐ為に、
水にさらしてアルカロイド毒を除去し、
食料として食べられていたこともあると言われています。

彼岸花は、田んぼのあぜ道や堤防によく植えられていますが、
彼岸花の毒性を利用して、鼠やモグラなどの害から守る役割がありました。

彼岸花の毒性は、彼岸花自体が動物や虫から球根を守るために、
有毒成分を持つようになったものを、
人々は昔から害獣除けとして有効に活用してきたわけです。

昔のお墓は土葬が多かったので、
お墓場に彼岸花が多いのも、この花の有毒性を利用して、
遺体を動物から守るためと言われています。

しかし、彼岸花の球根部分の強い毒性は、生薬として使われることもあり、
利尿作用や痰を取り除く作用があります。

また、成分の一つであるガランタミンは、
アルツハイマー病の治療薬として、研究・利用されていますが、
有毒ですので、素人が民間療法として利用するのはたいへん危険です。

『毒にも薬にもならない』ではなく、
彼岸花は使い方次第で『毒にも薬にもなる』ものなのです。

彼岸花(曼殊沙華)の成長のしかた

彼岸花(曼殊沙華)は、秋に急成長し開花します。

彼岸花は、お彼岸の頃になると芽を出し、
1日に10cm近くも茎が伸びます。

彼岸花の草丈は30~50㎝、
枝も葉も節もない花茎が地上に突出していて、
それが瞬く間に50センチ位になり、
その先端に花を包んでいる苞が一つだけ付きます。

苞が破れた後には、
5~7個前後の色鮮やかな赤い花を咲かせます。

輪生状に外向きに並んだ花の花びらは、
長さ4㎝程で幅約5㎜と細長く、大きく反り返っています。

まっすぐ伸びた茎の先に花だけがあり葉はありません。

彼岸花は、1週間ほどで花も茎も枯れてしまい、
その後、球根から緑の葉が伸びてきます。

彼岸花は冬に葉が茂ります。

周りの植物が枯れる冬の時期に、茂った葉のまま冬を越し、
春になると光合成をします。

彼岸花は球根で、
春の時期はせっせと光合成を行い、球根に栄養をためます。

彼岸花にとって夏は休眠期で、
夏には葉を枯らし、ためこんだ栄養で休眠期に入ります。

そして秋になると秋雨を滋養に、一気に姿を現して再び開花します。

ですから彼岸花には、
花のある時期には葉がなく、葉のある時期には花がないという特徴があり、
これはほかの花とは全く逆のサイクルと言えます。

そこでもう一つ、彼岸花に付けられた別名に、
『葉見ず花見ず(はみずはなみず)』という変わった呼び名がありますが、

これは、そんな彼岸花の生態からそう呼ばれているのです。

彼岸花の別名 曼珠沙華に付けられた花言葉の恐怖の由来

彼岸花の花言葉は、
・独立 ・情熱 ・再会 ・あきらめ・悲しい思い出 ・想うはあなた一人
・また会う日を楽しみに など、たくさんあります。

毒のある花からは、ちょっと想像しにくい花言葉ばかりですが、
彼岸花には、花の色によってそれぞれ違った意味の花言葉があります。

赤色のイメージが強い彼岸花ですが、
赤の他に白、赤、黄、オレンジ、ピンクなどが存在します。

ただ、日本では彼岸花の流通が少なく、
園芸植物として人気が高くはありません。

決して怖い花言葉をもっているわけではないのですが、
死や不吉な印象があることから、
贈り物として用いられることはほとんどありません。

赤い彼岸花の花言葉

情熱
想うはあなたひとり
あきらめ
再会
悲しい思い出
また会う日を楽しみに

彼岸花の印象的な赤い花の色から、
「情熱」や「想うはあなたひとり」といった花言葉が生まれたといわれています。

彼岸花の天にむかって真っ赤に咲き誇るその姿から、
天国にいる愛しい人への強い想いが想像できます。

「あきらめ」は、日本語ではギブアップの負のイメージが強いのですが、
仏教用語では、「真実」「悟り」という意味があります。

自分の心と向き合い、真実をみつめ「明らかにする」という、
残された人の心を癒す素晴らしい言葉なのです。

しかし、彼岸花の花に死や不吉なイメージが強いのは、
「彼岸花を家に持ち帰ると火事になる」
「彼岸花を摘むと死人がでる」
「彼岸花を摘むと手が腐る」といった、
いくつかの恐ろしい言い伝えがあるためです。

これらは、赤い花の色や花姿が炎を連想させることと、
彼岸花のもつ毒によるものとされています。

黄色い彼岸花の花言葉

陽気
元気な心
深い思いやりの心
追想

黄色い彼岸花には実は、
「陽気」「元気な心」というポジティブな花言葉もあるのです。

愛しい人の死をしっかりと受けとめ、
その悲しみを背負いながらも前を向いて歩いて行こうという、
固い決意を感じさせる花言葉です。

黄色い彼岸花 オーレア(ショウキラン/ショウキズイセン)は、
黄色の花びらをした原種で、
秋出葉型なので花が咲き終わった後に葉っぱが生えてきます。

リコリス・アルビフローラと同様に、
花びらが波を打って外に反り返る特徴があります。

耐寒性が少しありますが、
主に四国や九州に自生している品種です。

白い彼岸花の花言葉

想うはあなたひとり
またあう日を楽しみに

「想うはあなたひとり」は、赤い彼岸花にも共通する花言葉ですが、
その一途な個人に対する純粋な想いは、白い彼岸花にぴったりです。

今は離ればなれになってしまったけれど、
いつかまた必ずどこかで会えると信じることによって、
強く再生していくイメージが湧きます。

花は見ているだけではなく、その花が持つ花言葉を知ることで、
もっと心の深いところから癒されるのかもしれません。

白い彼岸花 リコリス・アルビフローラ(白花曼珠沙華/白彼岸花)は、
白い花びらをしていることから、白彼岸花とも呼ばれる品種です。

花が咲いた後に葉がでる秋出葉型タイプで、
花びらの縁がゆるやかな波を打って外側に反る特徴があります。

あとがき

彼岸花は見ていて美しいと思うのですが、
不吉な花だというイメージがあって、
飾ることはしませんでした。

でも、彼岸花自体に罪はありません。

迷信は、人々に信じられていることのうちで、
合理的な根拠を欠いているものということですが、
言い伝えには、何かしらの根拠があったり、
注意を促すことだったりします。

彼岸花の花言葉を知って、
その深い想いを感じることができました。

強さや可憐さも感じる彼岸花がもっと好きになりました。